研究課題/領域番号 |
21K17069
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
高瀬 一馬 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 客員研究員 (90736836)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 義歯床用材料 / 抗菌性 / 耐久性 |
研究実績の概要 |
超高齢社会を迎え、義歯の装着者は増加している。しかしながら、現在義歯に使用されている義歯床用材料は経年的に劣化し、カンジダ等による汚れが問題となっている。この汚れは義歯性口内炎のみならず、全身の健康にも影響する。そこで本研究ではFilastatinを応用した抗菌性と耐久性を付与した義歯床用材料の開発を目的とする。 令和3年度はまずアクリル系リライン材の組成と粘弾性的性質について検討した。粉末にはエチルメタクリレート/ブチルメタクリレートの共重合体を使用した。液には2種類のモノマーと可塑剤としてクエン酸エステルを用いた。また粉液比は2種類とした。モノマーの種類と可塑剤の含有量と、粘弾性的性質との関係を、非共振強制振動法による動的粘弾性自動測定器を用いて実験を行った。その結果、モノマーの種類は動的粘弾性的性質に影響を及ぼし、また可塑剤の含有量が増えるほど柔軟な物性を示す傾向であった。サーマルサイクル試験による耐久性の評価も行い、成分によりその影響も異なっていた。Filastatinはカンジダ属の付着を特異的に阻害する可能性があり、その効果について実験方法を検討した。材料の劣化については、成分の溶出量、吸水量が関与しており、本測定については開始した。溶出成分を特定するためのガスクロマトグラフィーによる解析手法の文献検索等を行った。令和4年度は市販アクリル系リライン材、シリコーン系リライン材およびティッシュコンディショナーを使用し、カンジダ属の付着実験方法の確立を行った。令和5年はアクリル系リライン材の粘弾性に及ぼす重合様式(化学重合、光重合、加熱重合)の影響について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
義歯床用材料の組成と粘弾性との関係についての実験をほぼ終了しており、また市販リライン材を使用し、軟質材料に対するカンジダ属の付着実験方法の確立を行った。しかしながら、当初計画の2年間では、Filastatin等の抗菌物質についての研究をすべて実施することができず、研究期間を延長している。本年度は重合様式による耐久性についても検討しているが、この実験について粘弾性については計測を終えているが、吸水・溶解についての実験は継続中で、まだ終了していないため、やや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
FilastatinやFilastatinの応用が困難な場合は他の抗菌剤を試作軟質リライン材に添加することも検討する。さらに抗菌剤を添加することによる本材の粘弾性的性質、耐久性、硬化挙動、吸水、成分の溶解等への影響についてもさらに評価し、また耐久性向上の観点から、適切な重合様式についてもさらに検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今回開発を目指す義歯床用材料の物性についての評価は令和3年度において進捗した。しかしながら、予想以上に抗菌剤の評価方法の確立に時間を要したため、抗菌剤を使用した実験の遂行が遅れ、それに伴い消耗品の購入量が減少した。令和4年度は抗菌剤の効果および物性に及ぼす影響について、重点的に検討を進めていき、カンジダ属の付着実験方法の確立を行った。しかしながらFilastatin等の抗菌物質に関する研究が予想よりも時間がかかり、現在、検討中である。抗菌剤の効果や生体適合性を検討する実験のため、Filastatin、細胞培養用培地、細胞培養用プレートや、粘弾性評価の実験に必要な硬質リライン材のモノマー、ポリマー、可塑剤、ならびにガスクロ関係の消耗品の購入に充てる予定である。
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