ヒアルロン酸は優れた保水性と創傷治癒効果を有し、歯科領域における骨補填材への応用が期待できる。本研究では、自家調製した架橋ヒアルロン酸(埋入試料)および既存の架橋型チオール修飾ヒアルロン酸(注入試料)を用いて、骨形成因子を含有した複合生体材料の最適な調製法と調製条件を探索した。調製試料の有効性は、動物実験および理工学的評価によって検証した。 埋入試料では、2官能性エポキシ架橋剤を用いてヒアルロン酸とアルカリゼラチンを架橋した。両架橋体は混合後に凍結乾燥し、円盤状のスポンジ体とした。注入試料では、ヒアルロン酸架橋キットを通法に従って混和し、架橋型ゾル試料とした。ナノハイドロキシアパタイト(nHAp)はBMP溶液中で複合化し、これをスポンジ体に含浸あるいは架橋型ゾル試料と混和し、BMP(+)試料とした。対照としてBMP無配合のBMP(-)試料を同様に調製した。 各調製段階の試料において種々の理工学的評価を行い、ヒアルロン酸架橋による熱的安定性および酵素分解耐性の向上、nHApによるタンパク吸着およびタンパク徐放性の向上が確認された。 動物実験は、埋入試料ではΦ6 mmの頭蓋骨欠損ラットを用いて、BMP(+)群・BMP(-)群・欠損のみ群(各群n=6)の比較をした。注入型試料では、ゾル試料充填リングをラット頭蓋骨上に埋入し、BMP(+)群・sham群(各群n=5)で比較した。8週後に頭蓋骨を採取し、放射線・組織学的に評価した。軟X線および組織標本を用いた計測の結果、埋入・注入の両試料において、BMP(+)群は対照群と比べて有意に大きい骨形成を示した。 本研究の結果から、ヒアルロン酸・アルカリゼラチン・nHAp・BMP複合生体材料は、短期間に骨組織の再生を促すことが明らかとなり、新規骨補填材料としての有用性が示唆された。
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