研究課題/領域番号 |
21K17080
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
梶本 昇 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 講師 (30824213)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | レジンセメント / マイクロ波 / 近赤外線 / 接着 / 脱着 |
研究実績の概要 |
昨年度の結果から,熱源としてSiCを単独で用いる実験を行った。 熱源SiCおよび熱膨張マイクロカプセル(TC)をMMA系レジンセメントに添加した組成の試作セメントを作製した。まずは,マイクロ波照射後の表面温度変化,寸法変化にから,添加成分の効果を検証したところ,SiCおよびTCともに可能な限り多く添加する必要があると考えられた。そこで,いくつかの組成でセメント硬化体の曲げ強さを測定し,組成を絞った。その結果,粉末成分にSiC40 mass%,TC30 mass%を添加した試料(S40-T30)がJIST6611:2009の歯質 接着性レジンセメントの曲げ強さ要件(20MPa以上)を満たした。この組成のセメント硬化体において,80W15秒の条件でマイクロ波(2450MHz)を照射したところ,明らかな温度上昇と170%以上の線膨張が認められた。また,L929細胞を用いた細胞毒性試験(抽出法,MTTアッセイ)においても市販のレジンセメントと相違ない細胞適合性を示した。 続いて,得られた試作セメントS40-T30に関して,照射条件の検討を行うこととした。その際,マイクロ波との比較として,波長が異なる電磁波である高周波(13.56MHz),近赤外線(300THz)をコントロールとして用い,照射による寸法変化を測定したことろ,近赤外線がマイクロ波と同レベルの膨張を示した。そこで,S40-T30以外の組成でも近赤外線を照射した検討を行ったところ,SiCの添加量を大幅に減じることが可能であることが分かった。 近赤外線はマイクロ波と比較して,バイオイメージングで使用されるなど安全性が高い波長域であること,また,実験が容易であること,現段階でマイクロ波による実験結果よりも優れていることから,近赤外線を用いた検討も並行して検討を進めることとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
熱源としてSiCを用いたことで,予想していた発熱および膨張が認められたことから,SiCと熱膨張カプセルの添加量を絞ることができた。また,マイクロ波照射だけでなく,近赤外線照射においても同様の特性を得られることが分かり,マイクロ波照射よりも簡便かつ安全な近赤外線を用いた接着/脱着が行える可能性が出てきた。 本研究の主目的は接着後に任意に脱着を可能にするという点にある。接着後にマイクロ波照射を行うことで脱着可能なのかデータが出そろっていないという点では当初の予定より遅れているが,当初の予定には無かった近赤外線照射による脱着という新たな可能性が見いだせたという点では研究は進んでいるため,それらを総合して「おおむね順調に進展」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に実施した研究結果に基づいて,接着/脱着試験を行う。すなわち,発熱源としてSiCを添加した試作セメント硬化体を作製し,マイクロ波照射の有無による接着強さの変化を明らかにする。また,2022年度の検討において,近赤外線でもマイクロ波照射と同等以上のセメントの発熱・膨張が認められていること,近赤外線がバイオイメージングで使用されるなど安全性が高い波長域である点,近赤外線を用いた照射方法が容易である点,これらを考慮して,近赤外線を用いた接着/脱着に関しても並行して検討を行う予定である。
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