クロマチンアクセシビリティ(ATAC-seq)解析によって,8Gyの放射線照射後にHSC-3(放射線耐性細胞)では,クロマチンの1273領域がopenになり,KOSC-2(放射線感受性細胞)では1760領域がcloseになったことを確認した.さらに,8Gy照射後のHSC-3でopen領域の近傍遺伝子群を抽出し,DAVID-GO解析で絞り込みをすると,細胞内シグナル伝達に関与する12遺伝子が有意に濃縮していた.12遺伝子の中でadenylate cyclase 2(ADCY2)のみが,HSC-3で8倍程度の発現増加が認められた.また,未照射の状態では,HSC-3とKOSC-2でADCY2の発現に有意な差は認めなかった.Integrative Genomics Viewer(IGV)では,HSC-3の放射線照射後にADCY2のプロモーター領域 (2000bp) に変動ピークの上昇が確認された.さらに,線量依存的にADCY2の発現量が増加していくことをmRNAレベルで確認した.次に,ADCY2を放射線耐性関連候補遺伝子とし,HSC-3におけるADCY2発現抑制細胞を作成した.放射線照射後の細胞生存率を比較すると,controlのHSC-3では95%程度であったが,ADCY2発現抑制HSC-3では,68%まで低下していた.本研究では,放射線照射によって惹起するADCY2の上昇は細胞の放射線抵抗性に関与する可能性が示唆された.
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