研究課題/領域番号 |
21K17082
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
板井 俊介 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (40878401)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | カヘキシア / 低栄養 / 体重減少 / 炎症 / 嚥下障害 |
研究実績の概要 |
生きる上で栄養を摂取することは必要不可欠であり、食べることは生きるための根幹といえる。本研究ではこうした観点から、健康寿命の維持・延伸には食べる ことが非常に重要であると考え、『食べること』に関連した視点から問題解決を図ろうとしている。 そこで我々は、栄養不良により衰弱した状態のカヘキシア に着目した。発症機序として食欲不振のほか、潜在する慢性炎症も重要な要因と考えられており、その機構は先行研究からも非常に複雑であることが判明しつつある。本研究では、先行研究の内容を引き継ぎつつ、臨床に即した観点(低栄養、体重減少など)で検証を進めている。 一昨年度から引き続き臨床に即した観点での研究を進めてきている。食事摂取時のSpO2濃度の低下や頸部の周囲長の減少等がみられる場合において、嚥下状態が比較的不良、あるいは悪化傾向にあり、SpO2濃度や頸部周囲長は嚥下の能力や状態と関連性があることを明らかにした。さらに実際の臨床の現場においても、完全側臥位法を用いることで誤嚥性肺炎患者の食事摂取の改善や、口頭流入の減少が見られることを示した論文もまとめてきた。 本年度は、上述のような今までの研究結果をまとめて論文化したことに加え、ビッグデータを活用した研究も行っている。具体的には、某県の大規模な介護保険データを解析に使用している。その研究により、1%以上の体重減少を認める場合には、要介護度が有意に上がることを解明した。昨年度の主に臨床の観点において栄養不足や低栄養の改善を図る方法を検証し、明らかにしてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
カヘキシアの主要因である低栄養に関して、臨床学的側面からの検証は進んでいるといえる。一方、分子学的要因の面からのアプローチが進んでいない状況である。 先行研究などを参考に分子学的アプローチに関して計画を検討していたが、実際の臨床と実験室レベルでは交絡因子に違いがあるなどの問題がり、検証が困難であることが予想されている。 そのため過去の文献以上の成果を得るのが難しい状況であり、その点も考慮し、研究の進捗はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、カヘキシアの機序について分子学的あるいは抗体医薬と、臨床学的な側面からのアプローチを検討していた。しかし先行研究などの知見を踏ま えると、特に分子学的アプローチにおいては実際の臨床と比べ交絡因子大きな違いがあるなどの課題があることが明らかとなってきており、臨床に役立つ成果を見出すという意味では、実験室レベルと臨床での実験とでは乖離がある可能性があるため、昨年度より計画の方向性を実臨床に即したものを中心としてきた。今後も引き続き、そのような方針で研究を進めていくことを検討している。
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