研究課題/領域番号 |
21K17084
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
稲木 涼子 東京大学, 医学部附属病院, 客員研究員 (90632456)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / ASC / 抗炎症作用 / 顎関節症 |
研究実績の概要 |
本研究では、脂肪由来間葉系幹細胞(ASC)の抗炎症効果および組織再生効果を利用した変形性顎関節症への治療応用を目指している。本年度は、ASCの抗炎症効果の検証と、動物モデルの確立を予定した。in vitroでは、マクロファージを用いた免疫細胞との共培養実験を行い、ASCの抗炎症作用を検証した。事前にLPS添加培地にて炎症性状態を誘導したマクロファージ系細胞株のRAW264.7とASCを共培養し、共培養2日後にRAW細胞を回収、ASC共培養に伴うRAW細胞の抗炎症シフトを確認した。共培養後のマクロファージは、炎症性のM1マクロファージ(CD80, CD11c陽性)が減少し、抗炎症性のM2マクロファージ( CD206陽性)が増加した。また、ELISA法にて培養上清中の炎症性サイトカインTNF-α、および抗炎症性サイトカインIL-10の含有量を測定した。結果、ASCとの共培養に伴い、培養上清に含まれる炎症性サイトカインTNF-αの減少を確認した。IL-10に関しては、差異を認めなかった。in vitroにおいて、ASCのマクロファージに対する抗炎症性の作用を確認した。in vivo 解析に関しては、ラット顎関節モデルの作製を予定していたが、モデル確立に難航している。そこで、顎関節症と機序は全く同一では無いが、再現性高く軟骨変性を起こすことができる変形性ヒザ関節症のマウスモデルを作製し、in vivoにおけるASCの抗炎症効果を検証した。8週令マウスの両膝を利用し、片側でOAモデル(内側半月板と内側側副の切除)を作製し、反対側では、切開のみを加えたsham側として比較した。術後1週で、乳酸リンゲル液に懸濁したマウスASCを投与し、術後4週で回収、評価を行った。結果、ASC非投与の対照群組織図では、OA側で軟骨変性が進行した。これに対し、ASC投与群では、OAモデル側の軟骨変性が抑制され、OAの組織評価に用いられるOARSIスコアも優位に改善した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度予定していた、ラットを用いた変形性顎関節症モデル作製に難航している。その代替動物モデルとして、同様の機序で関節軟骨に炎症および組織破壊が生じる、マウス変形性膝関節症モデルを使用して、ASCの抗炎症作用の解析をおこなった。
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今後の研究の推進方策 |
使用するヒトASCは複数のCD抗原陽性細胞を含み、ヘテロな細胞集団であるため、その治療効果に違いが生じることが予想される。より治療効果の高いASC細胞治療の実現を目指すに当たり、ASC内に存在する抗炎症能に優れた細胞亜集団の同定を、来年度以降実施する。先ずは、抗炎症作用の高いASC集団を規定するCD抗原プロファイルを決定する。絞り込んだ抗炎症作用の高い細胞集団に対して、単一細胞解析:Single Cell RNA-seq解析を行い、ASC 細胞集団の中における細胞亜集団の検出を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度実施を予定していた単一細胞解析:Single Cell RNA-seq解析が実施できなかった。そのため、予定していた解析費用を来年度以降に回したため、次年度使用額が生じた。
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