研究実績の概要 |
口腔癌に対する標準治療として手術、放射線療法、化学療法が挙げられ、それらを組み合わせた集学的治療が行われている。しかしながら局所進行例や再発転移症例に対する治療の選択肢は化学療法の発展に伴い広がったが予後不良であることが多い。近年、治療抵抗性を示す因子の一つにがん幹細胞(以下CSC)の関与が注目されている。がん幹細胞は自己複製能と多分化能を有しており、このがん幹細胞を死滅させることが進行例および再発転移症例に対する根本的治療につながると考える。近年、幹細胞性が極めて強く予後不良である悪性膠芽腫の治療薬として第三世代がん治療用ウイルスが製剤化されており、口腔癌に対する効果も期待できる。 CSCは間葉系性質を有しており、上皮接着性を有さないために浮遊培養で細胞塊(スフェア)を形成する。スフェアをシングルセルに分離し個々を培養すると自己増殖し再びスフェアを形成する。これは幹細胞性の特徴と言える。これまでヒト口腔扁平上皮がん細胞であるSAS,HSC-2、3,4を浮遊培養しそれぞれスフェアを形成し、そのスフェアをシングルセルに分離し培養を継続すると再度スフェア形成することが確認できた。今後、これらのスフェアに対するがん治療用ウイルスの殺細胞効果を検証するためにこれらの定量化を進め、また同時に幹細胞マーカーの発現量の変動の有無を検討する。さらに、原発巣と転移巣の細胞の幹細胞性の違いについて検討するためにin vivo実験も行う予定である。
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