研究課題/領域番号 |
21K17091
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
福田 直志 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 助教 (10804156)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | β-TCP / 自己硬化性 / 顆粒セメント / α-TCP / 垂直的骨造成 / 骨再建 |
研究実績の概要 |
本研究は、研究代表者が開発した自己硬化型β型リン酸三カルシウム顆粒セメント(β-TCPGC)を改良することで、連通気孔径を拡大制御し材料内部へ骨関連細胞や微小血管が早期侵入できるシステムを構築することを目的としている。本年度は、まず、β-TCPGCへ添加する気孔形成材料(ポロジェン)の候補であるα型リン酸三カルシウム(α-TCP)と硫酸カルシウム単独の生体内挙動を確認するために、実験動物を用いて予備的観察を行った。いずれも組織為害性は認めなかったが、硫酸カルシウムは生体内での溶解速度が速く、十分な移植ボリュームが維持できないものと考えられ、以降の検討についてはα-TCPをポロジェンとして採用することとした。次いで、ポロジェン添加β-TCPGC(p-β-TCPGC)の組成を最適化するために、粒径300~600 μmのα-TCP顆粒およびβ-TCP顆粒を6種類の重量比(α:β=0:10、2:8、4:6、6:4、8:2、10:0)になるように混合した。各々の重量比で混合した顆粒と練和液であるリン酸水素カルシウム飽和20 mmol/Lリン酸を反応させて硬化反応を観察したが、いずれも過不足なく硬化した。硬化後の試料はX線回折を行い、いずれの試料も新たに析出したリン酸水素カルシウム(DCPD)で硬化することが確認された。また、添加するα-TCPの量が増加するにつれて内部に形成されるDCPD量は減少し、硬化後の試料は脆くなる傾向を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の研究で6種類のp-β-TCPGCが調製された。今後、強度試験や溶解試験等を行ったうえで候補を3種類程度に絞って以降の細胞実験や動物実験を行う予定である。しかしながら、昨今のCOVID-19の影響により出張あるいは日常業務にも制限がかかっている状況で、研究自体の進行速度は遅れている。動物実験についても施設から可能な限り縮小するよう指示があり、十分に準備が進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
まず、p-β-TCPGCの各種物性評価が急務の課題である。次年度で十分な成果を得るために強度試験や細孔分布分析、溶解度試験については外部委託を検討している。細胞実験は生体内環境を完全に再現しておらず、本材料の有効性検証は動物実験が優先と考え、細胞実験は時間的余裕が確保される場合に実施する予定である。動物実験については、開始が遅れると予想されるが実施は可能であるので準備が出来次第併行して行う。予定の術後期間をおいて実験試料の摘出を行い、μCTによる形態学的な観察を行うとともに、病理組織切片を作製し組織学的観点からp-β-TCP GCの気孔変化における細胞・血管の侵入程度、骨伝導性、骨置換性の差を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨今のCOVID-19の影響により研究自体の進行が遅れているため次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した研究費と合わせて、外部委託を予定している強度試験や細孔分布分析、溶解度試験の委託試験料に使用し、また、実験動物購入、組織標本作製費用に使用する予定である。
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