研究課題/領域番号 |
21K17093
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 翔一 九州大学, 大学病院, 医員 (90876525)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | CK19 / ΔNp63 / OSCC / 浸潤 |
研究実績の概要 |
先の研究で、CK19高発現症例では、浸潤様式がgrade 4C/4Dなどの高度浸潤癌の症例が多く、節外浸潤の発生頻度が高いことが示された。それに伴い、CK19の発現がOSCC患者の生命予後に関与することも推察された。そこで今回、OSCCの浸潤に深く関与しているΔNp63との関連を検索するため、OSCC生検組織におけるΔNp63の局在を調べ、CK19の発現様式と比較検討した。 その結果、CK19低発現群では、同組織切片でΔNp63はほとんど全ての腫瘍細胞で発現を認めた。一方CK19高発現群の組織切片では、ΔNp63の発現は全体的に減弱しており、浸潤先端部では陽性細胞を検出できなかった。大変興味深いことにOSCC組織切片における浸潤先端部ではCK19が高発現しているが、ΔNp63の発現は認めなかったように、発現様式が逆の相関を示した。 上記より、OSCC浸潤先端部においてCK19とΔNp63の発現様式が相反していたことから、次にOSCC細胞においてもそれらの発現に同様の傾向があるか検討した。 その結果、ΔNp63の発現が最も高いHSC-2細胞ではCK19の発現が最も低く、逆に高転移株であるSQUU-B細胞ではΔNp63の発現はほとんど認められなかったが、CK19の発現は最も高かった。 これらのことから、OSCC生検組織の浸潤先端部の発現様式と同様に、OSCC細胞株においてもCK19とΔNp63の発現が逆相関しており、特に高い転移能を有する高度浸潤性細胞株(SQUU-B細胞)において、CK19が高発現していたことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナの影響もあり、物品、組織切片や細胞の準備に時間を要したが、ΔNp63とCK19との興味深い関連が明らかとなり、概ね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はCK19とΔNp63とのさらなる関連を検索するため、タンパクの発現や機能実験を行なっていく。 さらにΔNp63を介したOSCC浸潤機構において、Wnt5aシグナル伝達経路の検索を行う。そこで、細胞外基質分解酵素であるMMP-2の発現と細胞形態を変化させると考えられるCK19の発現を解析し、それらの関連を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は世界情勢やコロナの関係で物品の請求に遅れがあり、かつ研究に必要な組織切片は当科で作成できたため次年度使用額が生じた。 次年度は機能実験や遺伝操作を行うため、その経費として用いる予定である。
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