研究課題
がんの罹患率は年々増加傾向にあり、日本人の2人に1人はがんに罹患する時代が到来している。そのため、がんに関する研究は盛んに行われており、近年、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などの新たながん治療薬が開発されている。しかし、OSCC患者の生存率はここ数十年の間、大きくは改善されていない。その最大の要因は、OSCCの高い局所浸潤能にあり、高頻度に生じる転移を制御できていないためである。そこで我々は、転移の最初のプロセスである癌の浸潤に焦点をあてて研究を行ってきた。その結果、癌抑制遺伝子p53のホモログであるΔNp63の発現減弱によりEMTが誘導される分子機構の1つとして、Wnt5a とそのレセプターであるreceptor tyrosine kinase-like orphan receptor (Ror) 2シグナルとの関与を明らかにした。Wnt5aおよびRor2は、肺扁平上皮癌や皮膚扁平上皮癌などでも高発現している。我々もまた、OSCCにおいてWnt5a-Ror2シグナルを介してMMP-2の分泌が促進され、浸潤能が亢進することを示した。さらに、Wnt5aまたはRor2をノックダウンするとOSCCの浸潤能が抑制され、CK19の発現が減弱していた。CK19は、細胞骨格としての機能を果たす一方、非小細胞肺癌の有用なマーカーとして臨床応用されおり、様々な癌腫において浸潤との関与が報告されている。しかし、OSCCにおけるCK19の詳細な役割や、Wnt5aとの関連については不明である。そこで今回、OSCCの浸潤機構を解明するためにWnt5aシグナルとCK19との関連について検討した。
3: やや遅れている
出向により、研究機材不足や資材不足のため。
ΔNp63を介したOSCC浸潤機構では、Wnt5aシグナル伝達経路が2つの機能を果たしていることが考えられた。1つ目は、細胞外基質分解酵素であるMMP-2を発現し、細胞接着因子を分解して浸潤に有利な環境を構築するのではないかということ。2つ目は、CK19の発現により細胞形態を変化させ、OSCC自身の運動能を向上させているのではないかということ。これらの関連を調査するため、機能実験や新たな関連因子の調査を行う。
物品の請求、搬入が遅れたため。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)
INT J ORAL MAXILLOFAC SURG.
巻: 52- 5 ページ: 515-523
10.1016/j.ijom.2022.08.021.