研究課題/領域番号 |
21K17095
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
馬場 隼一 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (40644539)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 口腔癌転移 / プロテオーム解析 / サイトカイン / NF-kB |
研究実績の概要 |
癌組織内では癌細胞や炎症細胞が分泌するサイトカインが相互に影響しあい、複雑なネットワークを形成する。NF-kBなどの炎症シグナルは癌細胞内の遺伝子発現を大きく変動させ、転移を促進することが知られている。本研究では、炎症シグナル亢進が誘導するサイトカインネットワークを解析し、口腔癌転移機構の解明を目指す。 申請者らは口腔癌細胞株HSC-3細胞とその高転移能株HSC-3-M3細胞のトランスクリプトーム解析から、HSC-3-M3細胞においてTNFaやNF-kB経路が活性化されていることを報告している(Ideta Y. et al. Cancer Genomics Proteomics. 2021 Jan-Feb;18(1):17-27.)。そこで本年度は、HSC-3細胞とHSC-3-M3細胞のプロテオーム解析を行った。iTRAQ(Isobaric Tag for Relative and Absolute Quantitation)を用いた網羅的解析により発現変動タンパク質の同定を試みた。その結果、HSC-3-M3細胞で発現上昇しているタンパク質が104個見出された(FC>1.5, p-value<0.05)。これらのタンパク質の中には、TNFa/NF-kB経路に関するTRAF2やサイトカインIL-18が含まれていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HSC-3細胞とHSC-3-M3細胞の発現変動タンパク質はiTRAQ法により解析できたが、その後の機能解析に移るための候補因子の絞り込みと実験環境の構築に時間を費やした。
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今後の研究の推進方策 |
現在プロテオーム解析の結果と、既に報告しているトランスクリプトームの結果を照らし合わせて解析候補因子の絞り込みを行っている。例えば上記のIL-18は、口腔癌を含めたいくつかの癌の転移を促進することが知られているため解析候補の1つとする。IL-18はHSC-3-M3細胞の細胞培養上清中に分泌されている可能性があるため、ELISA法により検出する。また高転移能株HSC-3-M3細胞内のタンパク質発現を制御する経路を予測するためにIngenuity Pathway Analysisを行う。予測された経路の構成因子に対する阻害剤が存在する場合は、細胞培養実験で阻害剤処理による増殖能や浸潤能を検証する。これらの細胞培養実験で絞り込んだ治療標的候補分子の機能を動物実験により検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の進捗にやや遅れが生じたため,助成金の使用も遅れが出ている.次年度に繰り越した分も使用して研究を遂行する.
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