チェルビズム(CBM)は両側性に生じる顎骨の膨隆と炎症性骨破壊を特徴とする遺伝性骨系統疾患であり、Src Homology3 Domain-Binding Protein2(SH3BP2; マウスオーソログ遺伝子Sh3bp2)遺伝子のGain-of-function変異の関与が報告されている。しかしながら、CBMモデルマウスであるSh3bp2KI/KIマウスはCBMの最大の特徴である自発的な顎骨膨隆をきたすことはない。本研究では、病原体関連分子パターン(PAMPs)を顎骨に限局して導入するため、右側下顎第一大臼歯を歯科用ラウンドバーで露髄処理を行い、発症までの時間と発症部位に関して再現性が得られるSh3bp2KI/KIマウスを用いた新規CBMモデルを作製した。さらに、PAMPsとDAMPsの代表的な受容体であるTlr2/Tlr4ダブルノックアウトSh3bp2KIマウスの作製を行った。レントゲン画像、マイクロCT画像にて、顎骨膨隆の確認と定量を行った。Sh3bp2KI/KIマウスは露髄後14日で、Sh3bp2+/KIでは露髄後42日で顎骨膨隆を認めた。 さらに、このモデルの解析を行うため、顎骨からRNAを抽出したところ、各種サイトカインの発現の上昇を患側のみならず、健側でも認めた。Tlr2/Tlr4ダブルノックアウトSh3bp2KIマウスやLy6G 抗体を投与したSh3bp2KI/KIマウスでは、顎骨膨隆を認めなかった。また、組織免疫染色にてSh3bp2KI/KIマウスでは好中球の集積とNETsの代用マーカーの発現の上昇を認め、好中球関連イベントが顎骨膨隆の発症に関与していることが示唆された。
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