研究課題/領域番号 |
21K17102
|
研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
竹澤 晴香 (山口晴香) 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 講師 (00756942)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 光免疫療法 / リポソーム / DDS |
研究実績の概要 |
近年、リポソームによるドラッグデリバリーシステム (DDS) が注目されている。生体の構成成分であるリン脂質を主成分とするリポソームは、様々な分子をその内部に封入することが出来る。薬物を封入したリポソーム製剤は、癌組織の内部に新生された未成熟な血管にある隙間を利用して癌組織に到達する、Enhanced Permeability and Retention (EPR) 効果によって癌組織に集積する。集積後、リポソーム製剤はエンドサイトーシスによって癌細胞内に取り込まれて代謝され、薬物を細胞質内に拡散させる。しかし、現行のリポソーム製剤は分子標的薬と比較すると特異性に欠け、細胞内でライソゾームなどの酸性環境にさらされた場合、薬物の性質が変わる可能性があるなどの問題がある。本研究ではリポソームに、抗体小分子(Affibody) と光感受性物質 (IR700) の結合体を付加することで、光免疫療法の機能を備えた多機能性リポソーム製剤を開発し、より効果的で特異的なDDSを実現することを目指す。 当初の予定では初年度は多機能性リポソーム製剤を作成し、薬物の放出を確認した後に細胞内へのリポソーム製剤の取り込みを確認する予定であった。現在、多少の計画変更はあるものの、確実に実験を進めている。しかしながら、IR700Dye-抗体小分子複合体のリポソームへの結合効率が低いことが問題となっており、この点の改善が求められている。今年度はIR700Dyeの濃度などを見直し、結合効率の改善を図る。もし結合効率の改善が見られない場合には、抗体小分子とIR700Dyeをそれぞれ別にリポソーム表面に結合させることも検討する。その後、薬物放出実験と細胞内への取り込み実験を改めて行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験は進んでいるもののやや遅れている理由は、リポソームの抗体小分子の結合効率の悪さにある。Affibodyのチオール基にIR700Dyeを結合させ、その後リポソーム表面のマレイミドに同じチオール基を結合させようとしているため、最初にIR700Dyeがほぼすべてのチオール基を独占してしまうとリポソームに結合出来ない事態が起きる。現在この結合効率を上げるために追加実験を行っており、IR700Dyeの最適な濃度を検討している。
|
今後の研究の推進方策 |
IR700Dyeの濃度の変更で結合効率の改善が見られなければ、最初にリポソームを結合させてその後にIR700Dyeを結合させる方法を試みる。それでも効率が悪いようであれば、リポソームにはIR700Dyeを付加しないAffibodyも結合させ、細胞への輸送効率を上げることを検討する。また、IR700Dyeを直接リポソームに結合させて薬物を放出する方法も考える。
|
次年度使用額が生じた理由 |
リポソームを追加購入しようとしたが、残金では不足するため次年度購入とした。使用計画とずれが生じて金額が不足した理由は、抗体小分子の生産が昨年度で中止となり、今後の実験に必要な量をまとめて購入したためである。残金は次年度に繰り越して有効に使用する。このリポソーム購入の遅れによって計画に大きな変更は生じていない。
|