研究課題/領域番号 |
21K17104
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
堀江 尚弘 北海道医療大学, 歯学部, 助教 (30802318)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | CCN2 / shRNA / 骨芽細胞 |
研究実績の概要 |
本研究は結合組織増殖因子(CTGF/CCN2)に着目して,がん細胞におけるCCN2の発現機構を応用することで「新たな抗がん剤を探索すること」を目的としている. 本年度は細胞にCRISPR/Cas9 システムを応用したゲノム編集を施し,CCN2遺伝子発現をGFPの蛍光にて検知可能な,CCN2レポーター細胞を樹立することを計画していたが,まず予備検討としてCCN2遺伝子をノックダウンした際の細胞への影響を,骨芽細胞株であるMC3T3-E1細胞にshRNA技術を応用し解析した. MC3T3-E1細胞にCCN2遺伝子のshRNAを施したことにより,CCN2遺伝子発現が低下した細胞株;sh(+)を樹立できた.sh(+)とshコントロール細胞;sh(-)とを比較したところ,細胞形態に明らかな違いは認めなかったが,細胞増殖能についてはsh(+)の方が低下していた.骨関連遺伝子発現(Runx2,Col1,Bglap)はsh(+)群で高発現しており,CCN2関連タンパク質であるβ-CATENIN,MRTF-Aのタンパク質量もsh(+)群で多い傾向にあった.また,骨分化誘導実験においてsh(+)群でALP陽性細胞は多く認められ,MC3T3-E1細胞におけるCCN2遺伝子のノックダウンが同細胞の骨への分化を促進していたため,CCN2は骨芽細胞の骨分化を抑制することが想定された.加えて,樹立した細胞は先行研究から推定されたCCN2関連タンパク質の発現傾向を示しており,骨分化に関与するシグナル伝達の研究・創薬研究への応用が期待される。 本進捗状況を2023年3月23日~25日に国立京都国際会館にて開催された,第22回日本再生医療学会総会にて発表した(発表表題;下顎骨発生におけるCTGFの関与について).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は当初,新規抗がん剤候補化合物の探索に用いる,CCN2遺伝子発現の変化を光学的に検知可能な“CCN2レポーター細胞”の樹立に向け,CRISPR/Cas9システムによるゲノム編集を計画していた. 実際の進捗としては,CCN2遺伝子発現を変化させた際の細胞特性を解析するため,骨芽細胞株であるMC3T3-E1細胞にshRNA技術を用いてCCN2遺伝子をノックダウンさせ,CCN2の骨芽細胞への影響を分析した.同工程は当初の研究計画とは異なるため,進捗状況は「遅れている」と自己評価したが,CCN2レポーター細胞樹立前の基礎検討として,重要なデータとなった.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として,まずはMC3T3-E1細胞におけるCCN2遺伝子のノックダウンを追試験し,データが再現性を取れるかを確認したい.続いて,CCN2遺伝子を高発現させた際の表現型の変化についても解析し,CCN2遺伝子発現の変化によるMC3T3細胞への影響を明確化することが目標である. こうした検討を行った上で,ゲノム編集等の遺伝子組み換え技術を応用し“CCN2レポーター細胞”の樹立を試みたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
計画よりも研究が進捗しなかったため,次年度使用額が生じた.次年度には同資金を用いてトランスフェクション試薬やデータ解析用の機器等を取り揃えることを予定している.
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