研究実績の概要 |
口腔癌の化学療法においてシスプラチン(CDDP)は中心的役割を担っているが,口腔癌の進行例や再発例の多くはCDDPを用いた化学療法に抵抗性を示し予後は不良である.CDDP耐性機序の一つとして,銅輸送経路を介した白金排出機構が注目されており,なかでも銅輸送ATPase(ATP7B)がCDDP含む白金製剤の細胞外排出に関与していることが示唆されている.この銅輸送系を制御する因子の解明は,口腔癌の薬剤耐性という難問を解決するための大きな一歩となる可能性がある.また最近の研究では,細胞外小胞(EV)が癌治療抵抗性の主要な制御因子であることが報告されている.本研究では口腔癌におけるEVと銅輸送経路を介したCDDP耐性機構について明らかにすることを目的とした. 最終年度である令和5年度ではこれまでの本研究成果をまとめるためこれまでに出したin vitro実験の結果に対する追試および再現実験を行いつつ,学会での研究成果の発表や国際専門誌への投稿や査読対応を進めた.その結果,主軸となる本研究の成果および関連する研究の成果についてそれぞれ口腔腫瘍学に関する国際専門誌への受理に至った(Ogawa T, Head Neck, 2024; Umemori K, Oral Oncol, 2023).それだけに留まらず,未発表データの蓄積や,in vitro,in vivoでの実験に加え,臨床サンプルを用いた将来的な発展的研究への見通しがたったことで今後更なる研究成果が期待できる年度となった.
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