研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の原因ウイルスである SARS-CoV-2 は細胞表面に存在するアンギオテンシン変換酵素 ACE2 を受容体として結合することが報告されている。ACE2 は口腔組織に発現していることが近年報告されているが,ACE2 の宿主免疫応答機構は不明である。本研究は口腔粘膜におけるウイルス感染に対するACE2 の新規宿主免疫応答機構を解明することを目的とする。 2023年度は下記について検討した。 ①核酸導入によって誘導されるACE2 の発現誘導を活性化する因子を検討するため, IFN-γ, TNF-α,IFN-βの影響について検討した。その結果、RT7においてdsRNAとIFN-γ, dsDNAとTNF-αを同時添加した場合にACE2の発現が有意に増加した。また, IFN-βを添加した場合はdsRNA, dsDNAいずれにおいてもACE2の発現が有意に増加した。一方、GT1においてはdsRNA、dsDNAにIFN-γ, TNF-α,IFN-βを添加してもACE2の有意な増加は認められなかった。 ②SARS-CoV-2のSpike蛋白はACE2に結合し, 宿主の免疫応答を調節すること, Spike蛋白によって免疫細胞よりCXCL10が誘導されることが報告されている。口腔粘膜細胞におけるIFN-γ, TNF-α,IFN-βで誘導されるCXCL10に対するSpike蛋白の影響とACE2の関与について検討した。口腔粘膜細胞にSpike蛋白を単独で導入してもCXCL10の上昇は認めなかった。一方、RT7にSpike蛋白とIFN-γ, TNF-α,IFN-βを導入した場合,IFN-γ, IFN-βを導入した場合にCXCL10の有意な上昇が認められた。GT1においてはTNF-α,IFN-βを導入した場合にCXCL10の有意な上昇が認められた。
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