研究課題
protease-activated receptor(PAR)1はGタンパク共役型受容体の1つである。これまでに我々は、口腔扁平上皮癌(OSCC)の腫瘍中心部から浸潤先端部にかけて、転写因子であるΔNp63の発現が減弱し、PAR1の発現が増強したことを示してきたが、その役割は不明なままであった。本研究では、口腔扁平上皮癌(OSCC)におけるprotease-activated receptor(PAR)1の発現と上皮間葉転換(EMT)との関与について検討を進め、PAR1をOSCCの診断・治療におけるバイオマーカーとして確立することを目的としている。今回、OSCC組織標本を使用し免疫組織学的にΔNp63とPAR1の関連について検索を行なったところ、浸潤先端部においてΔNp63の発現減弱を認めた症例ではPAR1陽性群に多く、有意に関連していた。また、OSCCの頸部リンパ節転移の要因となる臨床病理学的因子の検索をロジスティック回帰分析による多変量解析を行なったところ、PAR1の発現様式にのみ統計学的有意差を認め、腫瘍細胞におけるPAR1陽性群は陰性群と比較し頸部リンパ節転移の発生率が有意に高かった。この結果は、PAR1が発現することによりOSCCの進展に必要であることを示すと同時に、予後予測因子としても有用であることを示唆している。
3: やや遅れている
今年度は、新型コロナウイルスの影響により研究室の使用も制限され、思うように研究をすすめることができなかったことからやや遅れていると判断した。しかし、PAR1の発現はOSCCの進展に寄与し予後不良を認めることから、バイオマーカーとして確立する上でも重要な知見と思われるため、やや遅れていると判断した。
当初の研究計画に則り、浸潤先端部におけるPAR1陽性間質細胞が、腫瘍細胞にどのような影響を与えているか検討する。間質細胞におけるin vivoの実験を可能な限り進めていく予定である。
当初計画していた国内外の学会への参加ができず、旅費に充てる使用額が当初の予定よりも少なくなっている。翌年度の物品購入に充てる予定としている。
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International Journal of Molecular Sciences
巻: 22 ページ: 9475
10.3390/ijms22179475
International Journal of Oral & Maxillofacial Surgery
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