研究課題/領域番号 |
21K17117
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
服部 多市 九州大学, 歯学研究院, 共同研究員 (10897185)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | PAR1 / ΔNp63 / EMT / thrombin |
研究実績の概要 |
protease-activated receptor(PAR)1はGタンパク共役型受容体の1つである。これまでに我々は、口腔扁平上皮癌(OSCC)の腫瘍中心部から浸潤先端部にかけて、転写因子であるΔNp63の発現が減弱し、PAR1の発現が増強したことを示してきたが、その役割は不明なままであった。本研究では、口腔扁平上皮癌(OSCC)におけるprotease-activated receptor(PAR)1の発現と上皮間葉転換(EMT)との関与について検討を進め、PAR1をOSCCの診断・治療におけるバイオマーカーとして確立することを目的としている。今回、OSCC組織標本を使用し免疫組織学的にΔNp63とPAR1の関連について検索を行なったところ、浸潤先端部においてΔNp63の発現減弱を認めた症例ではPAR1陽性群に多く、有意に関連していた。また、OSCCの頸部リンパ節転移の要因となる臨床病理学的因子の検索をロジスティック回帰分析による多変量解析を行なったところ、PAR1の発現様式にのみ統計学的有意差を認め、腫瘍細胞におけるPAR1陽性群は陰性群と比較し頸部リンパ節転移の発生率が有意に高かった。 この結果は、PAR1が発現することによりOSCCの進展に必要であることを示すと同時に、予後予測因子としても有用であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、新型コロナウイルスの影響により研究が制限され思うように進めることができなかったため、やや遅れていると判断した。しかし、その中で統計学的にPAR1とΔNp63との関連によりOSCCの進展に関与し予後不良になることが示唆され、バイオマーカーとして確立する上で重要な知見として確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に則り、浸潤先端部におけるPAR1陽性間質細胞が、腫瘍細胞にどのような影響を与えているか検討する。また、間質細胞におけるヌードマウスを用いたin vivoでの実験を可能な限り進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、新型コロナウイルスの影響により研究の進行が遅れていたこと、学会がWEB開催となったことで旅費として使用することがなかったことが次年度使用額が生じた大きな要因である。次年度では、当初の研究計画に沿って、ヌードマウス等の購入しin vivo実験を予定しているため、繰り越した分を次年度で使用する予定である。
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