乳がんの骨への転移は一般的であり、転移性乳がん女性の最大80%に見られる。骨転移を生じた患者は、通常BP製剤を含む骨吸収抑制薬を使用し、骨吸収抑制薬による顎骨壊死が、われわれ歯科領域では問題である.よって骨転移を含めた乳がんの病態解明が顎骨壊死の根本的解決につながる。がん細胞の浸潤や転移には、上皮間葉移行(EMT)が関わりTGF-βは代表的なEMT誘導因子である。BMP-3bはTGF-βスーパーファミリーに属するサイトカインでさまざまな組織の細胞に発現し、多く生命現象においてTGF-βの作用と拮抗することが報告されている。そこで本研究では、乳がん細胞におけるBMP-3bの作用を検討した。 The human Protein Atlasを用いて生存率とBMP-3bの発現を解析したところ、1075名の乳がん患者において、BMP-3bの発現が高い方が生存率が有意に高かった.NCBI GEOでBMP-3bの発現を解析したところ、健常乳腺組織と比べて、がん化した乳腺組織ではBMP-3bの発現が有意に低下していた。次に、マウス乳がん細胞4T1を用いた。WST-8法において、BMP-3の添加により生細胞数に明らかな変化はなかったが、Scratch法とTrance-well 法では、BMP-3b処理群の細胞移動は減少することがわかった。Wester blottingによりBMP-3bはTGF-βが誘導するSmad3のリン酸化を抑制することが明らかとなった。さらに、BMP-3bはTGF-βが誘導する細胞移動を抑制した。 BMP-3bはTGF-βシグナルを抑制し、乳がんの細胞移動を制御する。
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