研究課題/領域番号 |
21K17120
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
原口 和也 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (90807471)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | hTERT遺伝子 / 口腔癌 / 口腔粘膜疾患 / 異常メチル化 / EHA法 / テロメラーゼ / hTERTタンパク / 癌のセルフスクリーニング |
研究実績の概要 |
癌による死亡者数は年々増加傾向にあり、癌の早期発見、早期治療の重要性が叫ばれて久しい。口腔癌においても例外ではなく、口腔癌早期発見のために有用なスクリーニングシステムの開発が望まれる。申請者は以前よりテロメラーゼのmain subunitであるhTERTの構成遺伝子であるhTERT遺伝子の異常メチル化を対象とした口腔癌早期診断システムの開発を行ってきた。しかし、異常メチル化は加齢や炎症などの影響を受けることがあり、一つの遺伝子のみをターゲットとした場合、診断精度の低下が生じる可能性がある。したがって本研究では複数の遺伝子を対象として異常メチル化をターゲットとした口腔癌スクリーニングシステムの開発を目指す。 今までの研究機関内の研究では、患者自身が口腔内全体から採取した細胞検体を使用して。まずは過去の研究に倣って、hTERT遺伝子の異常メチル化を、九州工業大学が開発した異常メチル化解析手法である、Electrochemical hybridization(EHA)法を使用して計測した。その結果、口腔癌の群とそれ以外の口腔粘膜疾患と健常者を合わせた群、口腔癌と口腔粘膜疾患を併せた群と健常者群、それぞれの間で、hTERT遺伝子の異常メチル化の程度に有意差を認めた。今後は、これに加えてhTERTタンパクの免疫染色を行う予定としている。 本研究が実用化されれば、患者自身のセルフスクリーニングにも用いることができるようになると同時に、全身他部位の癌にも応用することができ、大きな発展性が見込まれる。また、口腔癌患者の経過観察にも使用することができれば、再発病変の早期発見につなげることも可能になると考える。加えて、免疫染色によるhTERTタンパク発現との関係について相互解析し、相関関係を得ることができれば、本法を用いることにより、簡便に予後予測や、治療法の決定に役立てることができると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
口腔癌のセルフスクリーニングシステムとする上で重要な、患者自身が採取した口腔剥離細胞検体においてhTERT遺伝子の異常メチル化をEHA法で検討することで、口腔癌患者と健常者が有意に区別できる結果が出ているため。 ただし、まだこれらの症例におけるhTERTタンパクの免疫染色を行えていないため、今後はhTERTタンパクの免疫染色も行い、EHA法の結果とhTERTタンパクの免疫染色の結果を併せて複合的に評価し、検討していく必要があると考える。
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今後の研究の推進方策 |
癌患者の80%以上にテロメラーゼが高発現しており、テロメラーゼが発癌にかかわっていることが複数の研究で報告されている。また、テロメラーゼ発現にはその構成要素の一つであるhTERTにおけるプロモーター領域の異常メチル化が関与していると考えられている。そのため、hTERTタンパクの免疫染色を行い、その結果とEHA法で得られたhTERT遺伝子の異常メチル化の結果との相関関係を評価する予定である。 また、EHA法の結果で、口腔癌の症例であったとしてもEHA法の結果では口腔癌とスクリーニングできなかったり、反対に健常者であったとしても、口腔癌と同様の結果が出る症例もあるため、これらの症例の特徴も詳細に検討し、スクリーニング精度の向上に努める必要があると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:当初購入を予定していたインキュベーターや蛍光プレートリーダーに関しては不要もしくは借用にて対応できたため、購入資金が不要となった。また、新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、学会がオンラインとなったため、学会参加費および旅費などが不要となったため。 次年度使用額の使用計画:EHAをさらに進め、症例数を増やすためにEHA用の試薬購入を行う予定である。また、hTERTタンパクの免疫染色のための抗体購入や試薬の購入を行う予定である。加えて、論文投稿料や学会参加費として使用する予定である。
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