好中球は炎症を制御する一方、過剰に活性化されると様々な炎症性サイトカインを放出し、逆に炎症の増悪や組織の損傷を引き起こすことが知られている。マウスにビスホスホネートおよびLPSを投与することで炎症惹起顎骨モデルを作製し、抗G-CSF中和抗体を用いた動物実験により、骨免疫学的に歯周炎や顎骨骨髄炎の解明を行う。 8週齢のC57BL/6Jマウスにゾレドロン酸 (250 μg/kg/day) を2日毎に腹腔内投与し、さらに並行して左側上顎第一臼歯部に5-0絹糸を巻き付け、周囲歯周組織にLPS (P.gingivalis由来)(Sigma-Aldrich)5μgを1週間毎に計5回投与し、炎症を惹起させたモデルを作製した。投与開始3週間後より、左側上顎第一臼歯部周囲歯肉にanti-GCSF antibody (R&D SYSTEMS) 1.5μgを局所投与(3回/週)し、anti-G-CSF投与群とした。一方、コントロール群は生理食塩水を局所投与した。投与開始5週後に、歯肉粘膜および顎骨を含めた組織を採取し、HE染色およびTRAP染色を行い、病理組織学的に評価を行った。TRAP染色では、コントロール群およびanti-G-CSF投与群ともに有意なTRAP染色陽性破骨細胞は認められず、ゾレドロン酸の効果を確認した。HE染色では、炎症を惹起させた第一大臼歯部の歯槽骨吸収を確認した。明らかな骨露出は認めなかったが、歯槽骨頂部にempty lacunaeを確認した。anti-G-CSF投与群はコントロール群と比較してempty lacunaeの減少を認め、骨壊死が制御されている可能性が示唆された。
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