研究課題/領域番号 |
21K17137
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
竜門 省二 岡山大学, 大学病院, 医員 (50875490)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | シスプラチン耐性口腔癌 / 銅キレート剤 / ATP7B |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、銅キレート剤を使用して、シスプラチン耐性口腔癌に対して、銅流出トランスポーターであるATP7Bの発現を制御することでCDDP耐性の克服を狙い、CDDP耐性口腔癌に対する新たな治療法を確立することを目的に研究を行う。 本研究での銅キレート剤は銅代謝疾患であるWilson病の治療薬として上市されているTM(Ammonium tetrathiomolybdata)を使用する。 本年は、口腔癌細胞株のCDDP耐性株の作製と、表現系の検討を行った。口腔癌細胞株(SAS)にCDDPを持続的に暴露させCDDP耐性株(SAS/CDDP- R)を作製した。CDDP耐性の獲得の確認のため、IC50やMTT assayを行った。CDDP耐性の口腔癌細胞株では、ATP7Bが高発現していることが知られているが、Western Blotting (WB) 法および免疫細胞染色でATP7Bの高発現を確認した。CDDP耐性細胞株にCDDPとTMを投与して、増殖能について検討した。以降、Control群、CDDP投与群、TM投与群、CDDPとTM併用投与群に分け実験を進めた。CDDP単独投与とControlを比較して細胞増殖に有意差認められないCDDP濃度でも、CDDPとTMを併用投与すると細胞増殖がより抑制されていた。in vitroにおいてTMの併用投与がCDDPの抗悪性腫瘍効果を高めていることを示し、TMの有効性が示唆される結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数のシスプラチン耐性の口腔癌細胞株の作製を行っており、耐性獲得の検討を実施した。当初は口腔癌細胞株のHSC-3を使用する予定であったが、SASにおいてシスプラチン耐性株(SAS/CDDP-R)が作製できたため、今後はまずはSASを用いて検討を予定している。現在はSASとSAS/CDDP-Rについての表現系の検討が進んでおり、in vivoへの準備を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
SASとSAS/CDDP-Rについて、細胞内シスプラチン濃度測定や増殖、アポトーシスについて検討を行う予定である。また、当大学の動物実験計画書については承認されており、動物実験も進めていく。 ATP7Bについて焦点を当てた実験を行っているが、ATP7Bノックダウン細胞の作製も平行して行っており、耐性機構の解明にも努めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
CDDP耐性口腔癌細胞株においてCDDPとTMを投与してTMのCDDPの抗腫瘍効果の増強について検討する。またアポトーシスへの影響についてもWB、蛍光免疫染色等で表現系を検討する。さらに細胞内 CDDPの測定を行う予定であるが、CDDP assay Kitとあわせて、原子吸光度計を使用する予定である。CDDPとTMは既に当研究室に購入されており、こちらに充てる費用が減らすことができたため、次年度使用額が生じた。原子吸光度計へ研究に費用が嵩むことが予想しており、前年の差額を充てる計画としている。
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