研究課題
本研究の目的は、銅キレート剤を使用して、シスプラチン耐性口腔癌に対して、銅流出トランスポーターでありATP7Bの発現を制御することでCDDP耐性の克服を狙い、CDDP耐性口腔癌に対する新たな治療法を確立することを目的に研究を行う。本年は、前年度に作製したSASの口腔癌耐性株に加えてHSC-3についてもCDDP耐性株の作製を行い、表現系の検討を行った。口腔癌細胞株(HSC-3)にCDDPを持続的に暴露させてCDDP耐性株(HSC-3/CDDP-R)を作製した。CDDP耐性獲得の確認のためにIC50やMTT assayを行った。CDDP耐性の口腔癌細胞株ではATP7Bが高発現していることが知られており、Western Blotting(WB)法および免疫細胞染色でATP7Bの高発現を確認した。CDDP耐性細胞株にCDDPとTM(Ammonium tetrathiomolybdate)を投与して、増殖能について検討した。以降はControl群、CDDP投与群、TM投与群、CDDPとTM投与群に分けて実験を進めた。CDDP単独投与とControlを比較して細胞増殖に有意差が認められないCDDP濃度であってもTMを併用投与すると細胞増殖がより抑制される結果を得られた。前年度の研究結果と合わせて口腔癌細胞株2種において、TMの併用投与がCDDPの抗悪性腫瘍効果を高めていることが示された。現在、当研究室にて細胞外小胞を用いたシスプラチン排出機構についても検討進めており、本研究との関連についても検証を行っている。
3: やや遅れている
当初は、作製したシスプラチン耐性の口腔癌細胞を使用して動物実験を行う予定であったが、実験室の改修工事等が重なり実施ができていない。その分、in vitroでの実験を進めている。昨年度はSAS細胞でのみ耐性株作製を行っていたが、本年はHSC-3細胞株においてもシスプラチン耐性株が作製されており、2種類の細胞株にて実験が進められる状況となっている。
岡山大学動物資源部門動物実験委員会への申請は既に許可を得ており、シスプラチン耐性口腔癌細胞を作製したことから、動物実験を始められる状況となった。まずは、背部皮下投与での軟組織レベルでの耐性細胞を用いた実験を予定している。
翌年度にも動物実験を予定しており、その経費に充てるため繰越とした。
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International Journal of Medical Sciences
巻: 19 ページ: 1321-1333