研究実績の概要 |
矯正歯科治療では矯正力を負荷することで歯根膜が圧縮力と伸展力の2種類の機械的刺激が付与され、歯根膜が機械的刺激として感知し、歯槽骨リモデリングが行われる。歯根膜細胞は機械的刺激を感知し、adenosine triphosphate(ATP) を細胞外へ放出する。細胞外ATPやその分解産物であるアデノシンはプリン受容体を介して骨吸収や骨形成を誘導することが示唆されている。細胞外ATPは、CD39(ATP分解酵素)によりadenosine monophosphate(AMP)へと分解され、AMPはCD73によりアデノシンへと分解される。ATPはP2プリン受容体、アデノシンはP1プリン受容体を介してシグナルを伝達する。細胞外ATPは、P2プリン受容体を介して、骨形成への関与が示唆されている。矯正歯科治療における歯槽骨リモデリングは骨吸収と骨形成の調和が重要であるが、プリン受容体がどのように関与しているかは知られていない。 本研究では、歯周組織におけるプリン作動性シグナル関連分子の発現と機械的刺激に伴う変化を解析するとともに、ATPおよびアデノシン受容体の骨形成・骨吸収への影響と相互作用を解明する。これにより、矯正歯科治療における歯槽骨リモデリングを活性化する新たなターゲットの発見を目的とする。 当該年度は、マウスの歯周組織におけるCD39, CD73発現について、免疫染色およびフローサイトメトリー解析を行った。正常状態では、歯肉において、CD39およびCD73発現が確認できた。 マウスの歯周組織を回収し、in vitro で刺激を行う予定であったが、歯周組織の採取方法が困難であり、安定した結果が得られなかった。
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