中顔面の陥凹は、外科的矯正治療などを必要とする大きな異常である。中顔面の陥凹は、家族性の症候群の一つの症状として認められることがある一方、非家族性としても多く見られる。非家族性中顔面陥凹は、非家族性であるためゲノムの異常が原因ではない。ゲノム以外の分子制御機構には、エピジェネティクスが知られており、複数あるエピジェネティクス因子の一つにmicroRNAがある。microRNAは、ターゲットのメッセンジャーRNAと結合することで、分子の発現量の調整を行う。1つのmicroRNAは複数〜数百の遺伝子をターゲットにするため、1つのmicroRNAの変化でもその分子変動は広範囲に渡る。顔面領域を形成する神経堤由来細胞のみでmicroRNAが欠損したマウス(Dicerf/f;Wnt1Cre)では、中顔面の陥凹が認められることが報告されており、microRNAが中顔面領域の形成に必須であることを示している。しかし、Dicerf/f;Wnt1Creマウスの中顔面陥凹の発症メカニズムについての詳細な解析は報告されていない。そこで、本研究では、Dicerf/f;Wnt1Creマウスで、どのような分子変化によって中顔面陥凹が引き起こされるかを検索することを目的とする。昨年度、βガラクトシダーゼ(senescence-associated β-galactosidase; SA β-Gal)の染色によって、Dicerf/f;Wnt1Creマウスの中顔面に老化の活性が認められたが、個体によってばらつきが大きかった。そのため、SA β-Gal染色の条件を様々再検討した結果、pH6.0で8時間の染色を行うことで、安定した結果が得られるようになった。p53の発現が認められ、DNAも損傷していた。
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