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2023 年度 実施状況報告書

歯周病菌P. gulaeによるバイオフィルム形成機序の解明と関連病原因子の同定

研究課題

研究課題/領域番号 21K17182
研究機関岡山大学

研究代表者

吉田 翔  岡山大学, 大学病院, 医員 (40801048)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード歯周病菌 / 線毛 / プロテアーゼ
研究実績の概要

Porphyromonas gulae は多数の動物の歯肉溝から検出される動物由来歯周病菌である。イヌの歯垢から分離されるPorphyromonas 属の割合は歯周疾患の重症度に相関し、P. gulae はイヌの健康な歯周ポケットよりも歯周疾患の罹患部位から高頻度で検出されることが報告されている。また近年ではイヌなどの伴侶動物を飼育するヒトの口腔内からも P. gulae から検出され、その検出率が歯周疾患の重症度に伴って高まることから、P. gulae は人獣共通感染症である可能性が示唆されている。歯周疾患は歯周ポケット内にて複数種の細菌と菌体外多糖類がバイオフィルムを構築することで発生する感染症であり、本研究は P. gulae バイオフィルムの形成機序と病原因子の関連性を解明することを目指す。
昨年度は高病原性をもつC型線毛保有株の fimA 遺伝子欠損株ならびに同相補株を用いてバイオフィルムを形成させ、共焦点レーザー顕微鏡を用いてその形態と構造を観察した。また並行して P. gulae ゲノム上のプロテアーゼ領域を欠損させた変異株を作製することを試みた結果、標的となるプロテアーゼ領域が複数存在することを確認した。これを踏まえて、P. gulae のプロテアーゼ領域と予測される塩基配列の PCR による解析を進めてきた。
今後はこれらの変異株が形成するバイオフィルムの性状を評価する。またこれと並行して P. gulae プロテアーゼ領域を欠損させた変異株を作製し、野生株との性状の差を確認する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

P. gulae の保有する病原因子のうち、線毛とプロテアーゼが P. gulae バイオフィルムに及ぼす影響を検討するための研究を進めてきた。
バイオフィルム構造の観察について、再現性の高い実験手順・解析方法の構築に時間を要した。線毛についてはヘキシジウムイオダイドを用いて染色した P. gulae 線毛欠損株ならびに相補株のバイオフィルムをチャンバースライド上に形成させ、共焦点レーザー顕微鏡を用いて P. gulae 線毛欠損株ならびに相補株が形成するバイオフィルムを観察した。さらにバイオフィルムの蛍光密度を画像解析ソフトを使用して測定した。その結果、野生株のバイオフィルムと比較して形態、形成量、厚みや密度に明確な違いは見られなかった。
プロテアーゼについては、欠損部位とする予定のプロテアーゼ領域を同定することを試みたところ、P. gulae プロテアーゼに関連する遺伝子配列が複数存在することが確認された。このため当初予定していた手順を見直す必要が生じた。 P. gulae の類似細菌である P. gingivalis が保有するプロテアーゼ領域の塩基配列を参考にプライマーを設計してPCRを行い、増幅された領域の塩基配列を確認することで、ゲノム上の複数箇所に存在する P. gulae プロテアーゼ領域の探索を行った。

今後の研究の推進方策

P. gulae が形成するバイオフィルムの耐久性を明らかにするため、3種類に分類される線毛遺伝子保有株ならびに線毛欠損株のバイオフィルムを作成し、超音波破砕試験を行う。バイオフィルムの物理刺激に対する耐久性を評価し、P. gulae バイオフィルムの物理的性状に線毛が及ぼす影響を観察する。
P. gulae プロテアーゼ欠損株の作製では、標的となる複数存在するプロテアーゼ遺伝子の塩基配列の解読を進める。塩基配列決定後、エリスロマイシン耐性カセットを挿入し、各領域のプロテアーゼ欠損株を作製する。塩基配列の探索が困難である場合、代替方法として各種トリプシン様プロテアーゼ阻害剤を用いることで、P. gulae バイオフィルム形成能への影響を評価する。

次年度使用額が生じた理由

P. gulae プロテアーゼは複数の領域に存在することが明らかになり、塩基配列の解読に時間を要している。また研究室の移転に伴い、バイオフィルム耐久試験などの解析に遅延を生じているため、次年度使用額が生じた。次年度では P. gulae バイオフィルムの物理的性状を評価すると共に、P. gulae プロテアーゼ欠損株を作製し、野生株とのバイオフィルム形成能や耐久性を確認する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Transcriptomic analysis of <i>Porphyromonas gingivalis</i>‐infected head and neck cancer cells: Identification of <scp>PLAU</scp> as a candidate prognostic biomarker2024

    • 著者名/発表者名
      Hamada Masakazu、Inaba Hiroaki、Nishiyama Kyoko、Yoshida Sho、Yura Yoshiaki、Matsumoto‐Nakano Michiyo、Uzawa Narikazu
    • 雑誌名

      Journal of Cellular and Molecular Medicine

      巻: 28 ページ: -

    • DOI

      10.1111/jcmm.18167

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Potential Role of the Intratumoral Microbiota in Prognosis of Head and Neck Cancer2023

    • 著者名/発表者名
      Hamada Masakazu、Inaba Hiroaki、Nishiyama Kyoko、Yoshida Sho、Yura Yoshiaki、Matsumoto-Nakano Michiyo、Uzawa Narikazu
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 24 ページ: 15456~15456

    • DOI

      10.3390/ijms242015456

  • [学会発表] Porphyromonas gulae 線毛遺伝子多型と バイオフィルムへの影響2023

    • 著者名/発表者名
      吉田翔、稲葉裕明、野村良太、仲野和彦、仲野道代
    • 学会等名
      第61回日本小児歯科学会大会

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公開日: 2024-12-25  

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