研究課題/領域番号 |
21K17184
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山本 多栄子 広島大学, 医系科学研究科(歯), 研究員 (10823198)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ロキソプロフェン / アセトアミノフェン / 歯根吸収 / 破歯細胞 / 破骨細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、実験的歯の移動モデルに対してロキソプロフェンとアセトアミノフェンがどのようなメカニズムにおいて影響を与えるかの比較を組織学的に解明するため、令和3年度においては以下の研究を行った。 ラット右側上顎切歯-第一臼歯間にクローズドコイルを装着し、切歯を固定源として第一臼歯を10gの力で近心移動させた。なお、実験群(ロキソプロフェン投与群およびアセトアミノフェン投与群)に対して、対照群(抗炎症剤非投与群)とした。そして、歯の移動開始から30日後の歯の移動量および歯根吸収量の差について検討を行なった。また、上顎骨を摘出し脱灰後、作製した組織切片を用いて、H-E染色と酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP) 染色を行い、歯根に出現する破歯細胞数について、密閉型デジタル顕微鏡を用いて解析を行った。 その結果、実験的歯の移動開始から30日後のコントロール群の根尖部には歯髄から歯根膜に接する部位において破歯細胞の出現と顕著な吸収窩が認められたのに対し、ロキソプロフェン投与群とアセトアミノフェン投与群では、破歯細胞はほとんど認められず、歯根吸収もわずかであった。また、抗炎症薬非投与群、ロキソプロフェン投与群、およびアセトアミノフェン投与群それぞれにおいて、歯槽骨圧迫側には破骨細胞の出現が認められ、歯槽骨の改造が進んでいる様子がうかがわれた。また、根尖部における歯根吸収量を計測した結果、歯の移動のみを行った群において最も大きい吸収量を示し、ロキソプロフェン投与群とアセトアミノフェン投与群間では歯根吸収量に差は認められなかったが、歯の移動のみを行った群と比較すると有意に小さい値を示した。そして、歯の移動距離に関しては、3群間で有意な差は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度においては、ロキソプロフェンとアセトアミノフェン投与が実験的歯の移動時における歯根吸収に及ぼす影響の比較の検討を行なうことができ、歯の移動量および歯根吸収量の差についての結果が得られた。また、歯の移動距離に関しても結果が得られた。概ね、順調に進んでおり、現在、作製した組織切片を用いて、COX-1,2の発現と炎症性サイトカイン (IL-1β、TNF-α、PGE2、IL-17)および破骨細胞分化因子 (RANKL、M-CSF、OPG) の発現について免疫組織化学染色を用いて評価を行なっている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、作製した組織切片を用いて、COX-1,2の発現と炎症性サイトカイン (IL-1β、TNF-α、PGE2、IL-17)および破骨細胞分化因子 (RANKL、M-CSF、OPG) の発現について免疫組織化学染色を用いて評価を行なっている。今後、ロキソプロフェン とアセトアミノフェン投与が実験的歯の移動時における疼痛の比較を、in vivoおよび、マルチブラケット装置を用いて矯正歯科治療を行う13歳以上の不正咬合患者を対象として行なっていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度以降は、ロキソプロフェンとアセトアミノフェン投与が実験的歯の移動時における疼痛の比較をin vivoおよび、マルチブラケット装置を用いて矯正歯科治療を行う13歳以上の不正咬合患者を対象とした研究を行うための費用が必要である。また、現在、進行中の作製した組織切片を用いたCOX-1,2の発現と炎症性サイトカイン (IL-1β、TNF-α、PGE2、IL-17)および破骨細胞分化因子 (RANKL、M-CSF、OPG) の発現についての免疫組織化学染色を用いた評価を行うためである。
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