研究課題/領域番号 |
21K17188
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
ヌエン アン・チュアン 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 客員研究員 (60897338)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 歯の移動 / 歯槽骨リモデリング / 人工知能 / 共分散進化戦略 / 3次元形状計測 |
研究実績の概要 |
本年度は、骨密度と骨リモデリング量の相関を調べるために、ラットを用いた実験的歯の移動を行った。10週齢ウィスター系雌のラットを対象に、固定源としてラット上顎前方部に歯科矯正用アンカースクリューを埋入し、10g の NiTi スプリングを用いて第一 臼歯の近心傾斜移動を行った。また、アンカースクリューと第二・第三臼歯はワイヤーで連結、固定した。移動前後のmicro CT 画像から歯の移動量を計測した。第二・第三臼歯を基準として、Iterative Closest Point アルゴリズムを用いて 3 次元の重ね合わせを行い、矯正力による第一臼歯の移動量を回転行列と並進量として計算した。歯槽骨密度はBone mineral density(BMD)が既知の標本を用いてキャリブレーションを行い、Hounsfield Unit(HU)から計算することとした。Mimicsを用いて移動前の micro CT データの HU値を全座標について出力し、BMDの3 次元マップを生成した。その結果、骨密度と骨吸収により生じる移動量は有意に相関しており、骨密度が大きい部位では歯の移動が遅くなる事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
有限要素モデルに適用するための生体データをマウスを用いた実験的歯の移動実験により取得する必要がある。歯の移動量を計測するためには、小動物用in vivoマイクロCTを用いて、歯の移動前と移動後の撮影を行った後に、3次元構築画像の重ね合わせより、歯の移動動態を評価する必要があるが、小動物用in vivoマイクロCTの老朽化により、実験的歯の移動実験を行えない事態に遭遇したため、研究の進行に遅延が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
骨密度と骨吸収量の関係を正確に評価するには、牽引方向や移動期間を再検討し、歯根の上顎洞への陥入を回避する必要があると考えられる。装置デザインとして、第一臼歯が上顎洞への陥入しない牽引方向を想定し、実験的歯の移動を行う必要がある。今後、実験的歯の移動実験データを蓄積し、より精度の高い長期的な歯の移動シミュレーションを行う予定である。人工知能 (AI) 技術を適用し、歯の移動量を計算するパラメータの最適化を行うことで骨改造現象を組み込んだ長期的な歯の移動シミュレーション法を開発する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスを用いた実験的歯の移動実験において、小動物用in vivoマイクロCTを用いて、移動前と移動後の撮影を行った後に、3次元構築画像の重ね合わせより、歯の移動動態を評価する必要があるが、小動物用in vivoマイクロCTの老朽化により、動物実験に必要な経費の執行が行えず、次年度使用額が生じた。今後の使用計画については、動物実験モデルを用い、マイクロCT画像の重ね合わせにより、歯の移動時の歯槽骨リモデリング速度を定量化するためのデータを蓄積するための、動物実験に必要な物品、その他を購入する予定である。
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