研究課題/領域番号 |
21K17191
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
岩崎 太郎 日本大学, 松戸歯学部, 助教 (60778281)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 乳歯冠 / 3Dプリンター / 付加製造 / Additive manufacturing / レジン / 機械的性質 |
研究実績の概要 |
現在、小児歯科治療では金属の既製乳歯冠による歯冠修復法が行われているが、審美性や金属アレルギーの問題が存在する。従来の既製冠同様に即日修復ができ、歯冠色で為害性の低いメタルフリー材料による乳臼歯部の被覆冠治療は確立されていないのが現状である。近年、デジタルデンティストリーの発展は著しく、CAD/CAM(computer aided designing/computer aided manufacturing)システムだけではなく、付加製造技術(additive manufacturing technology)の歯科医療への応用が注目されている。この技術は歯科補綴分野で実践的に用いられていることから、小児の乳歯冠製作への応用も可能であることが予想される。本研究の目的は、3Dプリンターにより造形されたレジン硬化体の材料学的な特性を多角的に検証し、それらの情報に基づいた乳歯冠デザインの最適化、そして乳歯冠の製作システムを構築することである。 令和3年度は、歯科用3Dプリンターによる造形物の製作システムの確立を目的として、CADソフトウエア上で作成した3Dモデルを造形し、寸法精度や表面性状を評価した。具体的には、3Dプリンターと液状の光硬化性樹脂(ウレタンジメタクリレート)を用いて、曲げ試験用の試料(25×2×2 mm)を造形した。造形されたレジン硬化体試料は、CADソフトウエア上で設定した寸法で得られ、また滑らかな表面性状であった。このことから、本法によって曲げ試験用試料のSTL(stereolithography)データの取得、造形システムの確立を達成することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、デジタルデンティストリーを応用し、審美性に優れ、さらに生体に対する為害性や患者の時間的負担を軽減する新規ノンメタル乳歯冠の製作やその製作システムの構築を目的としている。令和3年度においては、この新規乳歯冠製作のための基礎的研究、つまり3Dプリンターを活用した付加製造(additive manufacturing:AM)技術によるレジン硬化体の製作、そして材料試験によってそのレジン硬化体の材料学的なキャラクタリゼーションを行った。造形方法として液槽光重合(vat photopolymerization)法を用いた。 まずCADソフトウエア上で立体モデル(25×2×2 mm)を作成し、そのデジタルデータを基に、3Dプリンターと液状の光硬化性樹脂(主成分:ウレタンジメタクリレート)を用いて板状のレジン硬化体試料を製作した。その結果、本法によって高い寸法精度や円滑な表面性状を示すレジン硬化体が得られ、曲げ試験を行うための試料の造形が可能であることが示された。また、その試料のSTL(stereolithography)データの取得が達成された。造形されたレジン硬化体試料に対して曲げ試験を行った結果、積層方向や積層ピッチの各条件の違いが、弾性係数や最大応力値に影響を及ぼすことが示唆された。 以上のことから、本法によって造形されたレジン硬化体の機械的特性が明らかとなりつつあり、本研究はおおむね順調に進展しているものと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度では、デジタルデータの作成、その後の液槽光重合法による光硬化性樹脂の積層造形に至る手順を確立し、その結果、寸法精度や表面性状に優れたレジン硬化体を得ることができた。さらに、積層条件(積層方向や積層ピッチ)が機械的性質に影響を及ぼすことが明らかとなった。 これらを踏まえ、令和4年度では、各積層方向や積層ピッチの組み合わせが、どのように造形物の機械的性質に影響を及ぼすかについて詳細に明らかにする。また、各積層条件で造形された試料表面を走査電子顕微鏡で観察することによって視覚的な評価・検討も行う。さらに、他の各種材料試験(間接引張試験、ダイナミック超微小硬度計を用いたダイナミック硬さ試験等)や化学的特性の解明のための浸漬試験等を実施する予定である。 これらの材料学的なキャラクタリゼーションを行うとともに、本法での新規乳歯冠製作に向けた、乳歯冠デジタルデータの取得や数値シミュレーションによる乳歯冠構造の最適化を図っていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は、昨今の社会的情勢(コロナ禍)が主な原因となり、参加を予定していた国内の学会が、現地での開催ではなくWEB開催へ変更となった。そのため、この国内旅費として計上していた予算が次年度使用となった。 本研究はおおむね予定通りに進展しており、このまま計画通りに推し進めると、令和4年度はそれらの研究成果を国内外の雑誌へ論文投稿することが予想される。さらに、令和4年度の国内・国際学会の学術大会は現地開催が予定されていことから、旅費や学会参加・発表のために必要な費用等の発生が見込まれる。次年度へ繰り越された費用は、今後の研究成果の発信に係わる費用等に充てる予定である。
|