研究課題/領域番号 |
21K17194
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
佐久間 千里 愛知学院大学, 歯学部, 歯学部研究員 (40849709)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 口唇口蓋裂 / 口蓋裂 / 発生 |
研究実績の概要 |
申請者は、「胎生期に左右の口蓋突起が癒合し、口蓋が一旦形成された後に、癒合部が離開して口蓋裂が発症する」という、従来の概念とは異なった口蓋裂発症機序について、研究しており、特に、一旦癒合した口蓋が離開する機序について、基底膜の断裂によって離開することを明らかにしてきた(Sakuma: J Craniomaxillofac Surg. 46(12):2027-2031, 2018)。IRF6 はVan der Woude 症候群の原因遺伝子の1つであり、表現型として出現する先天性下唇瘻の発生機序は、下顎突起の癒合不全ないし癒合後の離開によるとされる。口蓋癒合後の離開という観点から非症候性の口蓋裂患者とIRF6との関連を証明できるかという問いについて、本研究では、口蓋が癒合後離開する原因について、口蓋部の筋および骨組織を観察し、口蓋突起癒合後に関与している遺伝子であるIRF6の変異について明らかにすることを目的としている。1年目の研究成果として、TCDD投与群の口腔側粘膜の基底膜の断裂を認めた部位では、E-cadherinの消失を認めたことから、口蓋癒合後離開の機序として、一度癒合した口蓋部における、基底膜の破断と上皮組織の異常増殖や、細胞間接着の低下と間葉系細胞の増殖阻害が複雑に影響し、上皮間葉転換の異常を生じて口蓋裂を発症する可能性があることを報告した(Sakuma: Int J Mol Sci. 23(4):2069, 2022)。また、申請者の研究室が保有している12000件以上のヒト遺伝子試料をもとに、ベトナム人口蓋裂単独患者血液サンプルより、IRF6遺伝子について、DNAシーケンスを行い、口蓋裂患者群および対照群についてそれぞれ500例のDNAシーケンスを行う計画しており、現在、口蓋裂患者群は452例、対照群については、422例のDNAの抽出を終えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1年目は、TCDD投与マウスの口蓋癒合部および離開に転じている部分における骨および筋組織の免疫染色を行い、対照群の口蓋癒合部と比較することで、口蓋癒合後に離開する機序について免疫組織学的に確認する予定であったが、適切な組織の免疫染色に苦慮しており、十分な組織染色像や結果が得られておらず、予定していた実験計画より少し遅れている。また、口蓋裂患者血液サンプルより、IRF6遺伝子についてDNAシーケンスを行っている。口蓋裂患者群500例、対照群500例の解析を計画していたが、口蓋裂患者群は452例、対照群については、422例のDNAの抽出を終えたところであり、当初の計画よりやや進行が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、2年目は、TCDD投与マウスの口蓋癒合部および離開に転じている部分における骨および筋組織の免疫染色を行い、対照群の口蓋癒合部と比較することで、口蓋癒合後に離開する機序について免疫組織学的に確認する。同時に、TCDD投与マウスの口蓋癒合部のirf6の遺伝子の発現について確認し、対照群の口蓋癒合部と比較することで遺伝子の関与について解析する。また、申請者の研究室が保有している12000件以上のヒト遺伝子試料をもとに、口蓋裂単独患者血液サンプルより、DNAシーケンスを行う。IRF6 遺伝子はexon数7個で、12994bpの長さをもつ遺伝子である。表現型として口蓋裂に着目し、口蓋裂患者試料のうち7個のexon各々の両端20-27bpをプライマーとし、遺伝子変異について確認し、口蓋裂との関連を調べる。3年目は、1年目と2年目で得られた結果をもとに口蓋が癒合後の離開による口蓋裂の発生機序について明らかになった点について考察を含めて論文を作成し、研究成果を報告する予定である。 2年目は、TCDD投与マウスの口蓋癒合部のirf6の遺伝子の発現について確認し、対照群の口蓋癒合部と比較することで遺伝子の関与について解析する。また、口蓋裂患者血液サンプルより、引き続きDNAシーケンスを行い、患者群500例、対照群500例の解析を行い、遺伝子変異について確認し、IRF6遺伝子について、口蓋裂との関連を調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画より推進状況が遅延していること、また、COVID-19感染拡大予防の観点から、都道府県を越えた学会への参加はオンラインで行ったため、旅費が使用されなかったため。
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