研究実績の概要 |
超高齢社会を背景に、高血圧患者の歯科治療を行う機会が増加している。高血圧患者の歯科治療は、歯科騒音による聴覚ストレス・痛み・不安・緊張による自律 神経系の変動から異常高血圧などの全身的偶発症を引き起こす可能性が高く、安全な歯科治療を行うためには自律神経変動の管理が重要である。これまで我々は、健康成人に対する音楽聴取が抜歯中の交感神経活動の増加を抑制し、不安を軽減させることを見出したが (Yamashita K et al, J oral surg, 2019)、高血圧患者に対する治療中の音楽聴取の有用性は明らかではない。そこで我々は高血圧患者を対象として、音楽聴取を併用した歯科治療中の自律神経変動の管理が可能となれば、超高齢社会における安全な歯科治療環境を構築できるのではないかと考えた。本研究は、高血圧患者に対する歯科治療時の音楽聴取が自律神経機能と心理面にどのような影響を与えるか調べることを目的としている。対象は、鹿児島大学病院を受診し、鹿児島大学病院全身管理歯科治療部において静脈内鎮静下での抜歯が必要と歯科医師が判断し、かつ本研究への参加の意思を表明した高血圧患者40名とした。対照群と音楽を聴取させる音楽群をランダムに割り付け、 デンタルチェア上で、脳波・心電リアルタイム解析システムMem calc Makin2(GMS社)を使用し、自律神経活動、循環動態のパラメーターを記録した。現在まだ研究を継続中であり、引き続きNを増やし、解析を行う予定である。健康成人においては静脈内鎮静中の音楽聴取の有用性を見出したため、国際誌へ投稿準備中である。また、高血圧患者の音楽聴取の有用性も見出し、その研究成果が雑誌に掲載された(山下et al.,Teethful,2024)。今後も継続的に研究を進めていく予定である。
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