研究課題/領域番号 |
21K17201
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
井上 真紀 九州歯科大学, その他部局等, 助教 (30882667)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 歯周病 / 簡易検査 / 免疫クロマトグラフィ |
研究実績の概要 |
歯周病の有病率は上昇の一途にあり、近年、歯周病が種々の全身疾患に関与するエビデンスが蓄積されている。しかし、企業歯科検診を始め、成人歯周病歯科検診受診率はきわめて低く、歯科保健という点では、歯周病患者数の把握は、十分な体制であるとは言い難い。その原因として、歯科検診に係る時間が長く、職場離脱時間という点で改善の余地があることに加え、現行の歯周病検査が、歯科医師の手技に依存する再現性の乏しい主観的判断(目視・歯周ポケットの深さ測定等)に基づいていることが挙げられる。そのようななか、簡便かつ科学的根拠に基づいた歯周病検査方法が強く求められている。 本研究では、企業と共同開発した歯周病原細菌特有の酵素活性の測定キットの有効性を検証し、新たな歯周病検査を提案することを目指す。パイロット調査で、同測定キットの検査結果が従来の歯周ポケット検査の結果と相関する傾向が確認されている。そこで今回は、被験者数を増やし、歯周病の重症化予防に資する歯周病検診方法を確立し、成人就業労働者に対する検診としての有効性を検証した。1000名以上より採取した舌苔拭い液を対象とした検査の結果から測定キットのスコアは、歯科医師による従来の歯周病検査結果と相関することが示され、特に重度歯周病については、優れた判別能を示した。さらに併せて新たな検査法として、歯周病原細菌および生体分子を標的とした歯周病検査キットの開発を行った。精製したモノクローナル抗体を用いて、歯周病源細菌Porphyromonas gingivalisと炎症性メディエータであるIL-1β、IL-6およびTNF-αの免疫クロマトグラフィを試作し、高感度化に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
企業との共同開発を展開した歯周病原細菌が産生する歯周組織破壊酵素活性測定キットによる臨床検体(舌苔拭い液)を用いた大規模な性能試験を行った。昨年度開発した測定キットの発色強度を自動判定する測定リーダーにより、健全・軽度と中等度歯周病の間の発色強度の微細な差の判別能が向上することを証明している。これを用いた1045名を対象とした大規模な成人就業労働者向け歯科検診において、重度歯周病に対する優れた判別能を示した。さらに、連携する医療機関においても同キットを用いた歯周病検査を実施し、検査結果を全身の検査データと紐付けたデータベースの構築を行っている。 多因子性疾患である歯周病に対して、より精度の高い定量的検査の実現化を目指すためには、多項目のパラメータを検出可能なシステムの構築が求められる。そこで、免疫クロマトグラフィの技術を基盤とした歯周組織で産生される「炎症性メディエータ」の簡易検出法を開発し、歯周病の病態や進行を高い精度で診断できるマルチモーダルの検査システムの構築に取り組んだ。加えて、口腔局所の正常フローラを撹乱して歯周組織に慢性炎症を惹起するのに重要な役割を果たすkeystone pathogenと考えられている歯周病原細菌P. gingivalisを検出可能な免疫クロマトグラフィと検出ラインの強度を数値化可能な測定リーダーの開発も遂行した。ともに試作を終了し、現在の課題である検査キットの高感度化に向けた改良を継続している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、大規模な成人就業労働者向け歯科検診を通じて、歯周病原細菌由来の歯周組織破壊酵素活性測定キットと測定リーダーの性能試験、および連携医療機関における歯周病検査を継続する。それぞれの検査結果のデータベースを構築し同キットのスコアと入手した歯周組織検査や全身パラメータとの関連性を中心に科学的に明らかにする。研究成果については、取りまとめ、学会および国際学術誌にて発表を行う。 免疫クロマトグラフィを応用したP. gingivalisの簡易検出キットの開発や性能試験については、新プロジェクトとして獲得した補助金(課題番号23K16233)の枠組みのなかで今後、研究を継続する。一方、炎症性メディエータの簡易検出キットについては、ナノコンポジットビーズの使用や、発色検出系などさまざまなアプローチから高感度化に取り組み、pg/mLオーダーの検出を目指す。
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