研究実績の概要 |
近年新規抗がん薬剤としてセツキシマブとニボルマブが口腔癌へ適応拡大された。化学療法のレジメン数が増加し、患者ごとに適した治療選択が可能となり予後の向上が期待される中、国民医療費は増大し続けており、医療の質と費用対効果を高めるためにエビデンスに基づいた医療政策が重要視されてきている。 本研究では、まず大規模診療報酬請求情報データベースをもとに口腔がん患者の治療実態と長期予後を記述し、医療費について調査した。株式会社日本医療データセンター(JMDC)のレセプトデータを用いて2005年1月から2020年12月までに口腔・咽頭がん(ICD-10コードC00-C14)の病名がついた患者を対象とした。適格基準は、観察開始から6ヶ月以上経過した後に口腔・咽頭がんの診断を受けている患者、手術、放射線治療、化学療法のうち少なくとも1つの治療を受けている患者、除外基準は、口腔・咽頭がんの疑い病名のみの患者、口腔・咽頭がんの診断前に他部位のがんの診断を受けている患者とした。口腔・咽頭がんの診断後に他部位のがん(ICD-10コードC15-C73)の病名がついたことをSecondary primary cancers(SPCs)発症の定義とした。 口腔・咽頭がん患者21,736名のうち、1,633名が解析対象者となった。性差は男性が72.4%と多く、年齢では55から64歳が37.0%と最も多かった。対象者のうち388名がSPCsを発症した(発症率、8.0/1,000人月)。初発がんの部位別の発症率は下咽頭が最も多く、歯肉、口蓋であり、耳下腺が最も低かった。SPCsの発生部位は、食道が最も多く、次いで肺、喉頭であった。多変量解析の結果、年齢(≧55歳)、化学療法や放射線療法を行っていること、また口腔底、歯肉、下咽頭に発症した口腔・咽頭がんは、SPCsの発生リスクが増加した。
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