障害者歯科診療において麻酔の前投薬としてミダゾラムの経口投与が行われることがあるが、麻酔の覚醒が遅くなることから日帰り麻酔での安全性に問題があった。プロポフォールは効果発現と代謝が速いため調節性が良いが、脂肪製剤を乳化剤としてエマルションの形になっており消化管内で分解されないため、内服しても薬理効果が期待できない。そこで、プロポフォールを薬物キャリアであるリポソームに封入することで経口投与を可能にすることができると考え、安全な日帰り麻酔の確立のために、プロポフォール封入リポソームの臨床応用を目指した。まず、脂質およびプロポフォールの混和溶液から、溶媒を除去し、ボルテクスィング法でプロポフォール封入リポソームを作製した。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いてプロポフォール濃度を測定し、プロポフォール封入リポソームの封入率を算出した結果、概ね20~40%の封入率が確認できた。生物学的利用能の評価のために、プロポフォール製剤およびプロポフォール封入リポソームをウサギに静脈内投与および経口投与した後、経時的に採血し、HPLCを用いて血中濃度を測定した。その結果、1 mg/kgの静脈内投与ではプロポフォール封入リポソームの生物学的利用能はプロポフォール製剤よりも高かった。しかし、1 mg/kgの経口投与では両者とも血中濃度は測定できなかったため、4 mg/kgのプロポフォール封入リポソームを経口投与したところ血中濃度は測定できた。さらに、サンプル密閉式超音波装置を用いて超音波処理を行い、プロポフォール封入リポソームの細粒化を試み、4 mg/kgの細粒化プロポフォール封入リポソームをウサギに経口投与したが、生物学的利用能の改善は得られなかった。今後、プロポフォール封入リポソームの作製方法および投与経路について更なる検討が必要であると考えられた。
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