がん治療による合併症の予防や緩和を行う支持療法としての周術期口腔機能管理が注目を集めており、鹿児島大学病院では、現在、全身麻酔下での手術患者のほぼ全てに対して口腔機能管理を行っている。がんは日本における死因の第一位であり、胃がん患者数は、肺がん、大腸がんに次いで三番目に多く、現在も罹患数は増加している。本研究では胃がん患者による周術期口腔機能管理の有効性を調べた。 対象者は鹿児島大学病院消化器外科において、胃がん手術を全身麻酔下で施行した患者で、全症例を周術期口腔機能管理群と非管理群の二群に分類した。調査項目は患者因子(年齢、性別など)、腫瘍因子(がんステージなど)、治療因子(手術時間、入院期間など)とした。周術期口腔機能管理群は、歯科医師または歯科衛生士による専門的な口腔機能管理を受け、入院後から手術日までに口腔衛生指導、歯石除去、機械的歯面清掃、舌清掃を施行された。 本研究より、周術期口腔機能管理群は非管理群と比較して、手術時間はより長く、入院期間はより短いことが認められた。周術期口腔機能管理を術前に行うことによって、入院期間が短縮されることが認められた。一般に手術時間が長いほど、重度の複雑な手術が考えられる。しかし今回の分析では、管理群は非管理群よりも手術時間はより長いにもかかわらず入院期間はより短かったことから、術前の周術期口腔機能管理は術後の早期回復に有効であることが示唆された。 また、ベイジアンネットワークでは周術期口腔機能管理の介入が在院日数、発熱日数、CRP値(術後7日後)に影響を与えることが示唆された。
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