研究課題
これまで歯科大学における歯科訪問診療や摂食嚥下障害の教育では、施設や在宅に学生を同行させ、臨床体験をさせるという方法をとっていた。しかしCOVID-19の感染拡大にともない、施設への訪問診療自体が困難になったことに加えて学生を実際に施設に帯同することが困難になった。本研究はこれらの解決策としてバーチャルリアリティー(以下VR)を用い、更にVR動画の中に生体情報としての頸部聴診音を組み込んだ体験ができるシステムを構築し、学生教育に用いることで、より臨床に近い形での実習を行うことができる教育システムを開発し、教育効果を明らかにすることを目的としている。本研究の対象として、当クリニックにて臨床実習を行った学生に、VR実習と実際の歯科訪問診療の体験実習(以下歯科訪問診療実習)の双方を行わせたのち、「訪問診療に参加した感想を述べなさい。」 「 VR実習の感想を述べなさい。」という問いに対してアンケート調査を行い、テキストマイニングを行って実際の臨床実習とVRの双方における違いを検討した。VRのアンケートの結果として,歯科訪問診療実習後のアンケートの結果において関連する単語の「患者」に共起された単語として「家族」信頼度:100,「自分」信頼度:100などが抽出された。一方、VRに関連している「音」に共起される単語を抽出したところ、「聴診器」信頼度90.9は、「聞く+できる」信頼度:88.9だった。本研究の結果より、VRに関してのアンケートは聴診音の体験が可能であることそのものへの意見が多く、実際の歯科訪問診療実習に関してのアンケートは患者自身の状態や周囲の環境への意見が多かった。VRと実際の歯科訪問診療実習とアンケート結果に乖離がみられたことから実際の場面の体験とVRとの間には相違があったものの、一定の学習効果が認められたと考える。
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