2023年度に実施された前向き観察研究は、全国21の施設で行われ、片側鼠径ヘルニアの手術を受ける成人患者1467名が対象であった。研究の主な目的は、待機的腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復手術後の合併症発生率を術後3ヶ月間追跡調査することである。患者は術前、術後1週間、1ヶ月、3ヶ月目の各時点でアンケートに回答し、術後の疼痛レベル、鎮痛剤の使用頻度、皮下出血、陰嚢血種、水腫の発生、日常生活や社会への復帰期間、手術に対する満足度などが評価された。
調査結果によると、手術平均時間は約75分であった。術後3ヶ月目には、鼠径部の痛みが全くないと回答した患者が88%に達し、臨床的に意義のある強い痛みを訴える患者はわずか0.5%に留まった。痛みが業務に大きな支障をきたすと報告した患者も0.16%と非常に低い割合であった。同期間中に鼠径部の腫れを訴えた患者は1.7%であり、これらはすべて水腫と診断された。また、研究期間内に鼠径ヘルニアの再発は認められなかった。
この研究成果は、日本ヘルニア学会およびアジア太平洋ヘルニア学会で発表され、関連する論文も投稿中である。これらのデータは、腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復手術の安全性と有効性を示すものであり、今後の臨床現場での治療選択に重要な情報を提供するものと期待される。研究は、手術の安全性と効果を評価するための重要な基盤を築き、将来の医療の改善に寄与する可能性が高い。また、この研究は患者のQOL向上にも寄与すると期待される。
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