入院患者が医療者の助言に反して退院(自主退院:Discharge Against Medical Advice(DAMA))するケースは、死亡率や合併症発生率の上昇、医療費の増加につながるとともに、医療現場の混乱を招くことが報告されている。DAMAの発生率やその理由は国により異なるが、日本における先行研究は乏しい。本研究は、群馬県におけるDAMAの現状を調査し、地域における医療的、社会的な課題を明らかにする目的で実施した。 2016年4月1日から2021年3月31日の間に群馬県内の24医療機関に入院した20歳以上の患者のうち、担当医師あるいは医療安全部門の担当者が自主退院と判断したものについて、質問紙票を配布して調査を行った。8医療機関、57症例について回答を得た。40-59歳が22例(38%)、60-79歳が17例(30%)、80歳以上が10例(18%)、20-39歳が8例(14%)であった。男性が43例(75%)と多く、血縁のある家族と同居している患者が31例(54%)であった。受診経路が救急搬送であった割合は52.6%で、当該医療機関の通院患者は38.6%である一方、初診患者は61.4%であった。DAMAまでの入院期間の中央値は12.5日であった。DAMAに至った理由として、病院側の要因を49%で、経済的理由や家族など患者側の要因を96%で認めた。退院後の経過を追えた患者40人のうち、当該医療機関に再入院となった症例は9例(23%)、紹介先の他院に入院あるいは受診した症例は9例(23%)あった。 DAMAに至った患者は再入院を要するケースがあり、また患者側の要因でDAMAに至るケースを多く認めることから、患者が安心して入院継続できるような社会的な支援体制が必要であると考えられた。
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