研究課題/領域番号 |
21K17231
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
朴 珍相 国際医療福祉大学, 福岡薬学部, 講師 (20749949)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ポリファーマシー / 多剤併用 / 向精神薬 / 医療リアルワールドデータ / 国際比較 |
研究実績の概要 |
高齢者を中心に薬剤の多剤併用が社会問題化しており、薬剤の多剤併用(ポリファーマシー)に対する注意喚起をしたガイドラインが近年発出されている。政策的介入に関しては診療報酬改定に伴い、ポリファーマシーを抑制するため複数の政策が施行されている。ただし、診療報酬改定により薬剤使用の適正化に向けた現行の取り組みが、臨床現場においてどのような効果を及ぼしているかに関しては十分な検討がなされていない。本研究の目的は、悉皆性の高いリアルワールドデータである電子カルテデータや全国レセプトデータを用いて、国内外のポリファーマシーの実態を定量的に評価し、政策介入と臨床側の処方変容の相関を総合評価する手法の確立案を検討することである。そのために、2021年度においては、(1)日本全国における診療報酬評価規定に基づく薬剤多剤処方率の全国コホート研究と、(2)医療施設が保有するレセプトデータを用いた向精神薬の処方率を記述疫学的に可視化した。 (1)の全国コホート研究として、厚生労働省が構築している、全国の診療実態を調べることができる匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報データベース(NDB)の一般公開データを活用し、診療報酬における1処方につき7種類以上の内服薬の処方率および3種類以上の向精神薬の処方率の推計、年齢、都道府県別の処方傾向を調査し、多剤処方率の地域差に関連する要因の特定、等に関する研究成果を上げることができた。 (2)の医療機関のレセプトデータを用いた疫学研究にあたっては、ベンゾジアゼピン受容体作動薬の処方傾向を2009年4月から12年間の時系列データで後ろ向きコホート研究を実施し、処方割合が診療報酬改定時期ごとに統計学的に有意に減少している現状を明らかにし、多剤処方に関連する診療報酬改定は処方量に影響する因子として論じることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画において、2021年度は、厚生労働省が構築している、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)の元のデータの利用申出を行うため、データ提供を受けるまでの期間は予備的研究として用いたNDBオープンデータや医療機関の電子カルテデータから解析用データセットを抽出して研究を進めることができた。予備的研究の成果を国際学会にて口頭発表および、国際学術誌に研究内容に直結する数編の論文が採択される等の成果を上げており、研究計画は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、レセプト情報等データベース(NDB)の利用申出承諾以降、データが厚生労働省から研究代表者へ提供され次第、診療報酬改定に伴う薬剤の多剤併用実態および、高齢者が注意すべき薬剤の処方動向を記述疫学的に可視化する。 NDBデータから得られない併用薬剤数、患者背景等の範囲から精度評価は、申請者が所属している医療機関グループの医療情報データベースを用いて急性期多施設での多剤処方の実態を時系列で調査し、薬剤の適正使用に対する医療政策・経済学的効果の評価も実施していく予定である。また、今年度の成果が、2023年度に実施予定の国外研究結果と定量的な比較調査に繋げるように研究体制を構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初研究計画では、今年度中にレセプト情報等データベースの利用申出を行い、次年度にかけてデータ解析の作業を行う予定だった。厚生労働省大臣の許可を得られているにもかかわらず、現時点でレセプト情報データベースの提供が完了していない状況にあり、レセプトデータの提供を受けるまでの期間は政府統計共同利用システムや急性期病院の電子カルテデータを用いた予備的研究を進めた。これにより、当初計画よりも研究の進展があったため、最終年度に計画していた国際比較研究を次年度に行う計画が成立された。このような理由から、レセプト情報データベースの提供を受けた後に速やかにデータ入手や研究計画の目標達成に対応するため、次年度使用額が生じた。
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