本研究は、医療・介護分野の「資源配置の適正化」に関する政策を支援することを目的とした分析手法の開発、および提案を行うことである。行政が管理するレセプトデータベースを始めとし、医療・介護・健診データに被保険者情報などを組みわせることで、医療にとどまらず、所得や要介護度、居住地情報など視点を加えながら、情報提供を行うことを目指している。 本研究はレセプトデータを使用した研究であり、多様な分析を実施してきたが、ここではCOVID-19期間の医療サービス利用、および医療連携状態の変遷の評価について取り上げる。 新興感染症流行という外部環境の変化に対して、政策や医療提供体制の変化に着目した分析は将来的な新たな感染症流行に対するケーススタディとして有用である。本研究では、分断時系列解析により、遠隔診療などの外来受診行動に影響を与える制度変遷に焦点を絞り分析を行った。一時的に利用状況が増加したものの、長期的な普及傾向には至っていないことや、新たな利用者の増加傾向は疾患ごとに異なることを明らかに、英語論文として纏め2件公表されている また、医療連携の実態について分析する手法提案を試み、レセプトデータを用いたネットワーク分析を行った。ネットワーク分析は情報工学や社会学の手法であるが、患者受診行動の評価に用いられた例はない。連携状態を記述する手法開発や、評価指標の算出を行った内容を国際学会にて報告し、英文雑誌へ掲載された。 本研究により、レセプトデータの利用可能性を拡張し、医療の質を連携という観点から分析する手法論開発の有効性と実現可能性を見出すことができた。医療提供体制において、連携は重要な論点であり、医療の質を評価する際に単独施設の評価にとどまらず、医療連携というネットワークの中で評価することは極めて重要である。本研究で得られた知見を纏めることで、新たな手法のさらなる検討を進める予定である。
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