本研究の目的は、救急機能を維持した働き方改革を実現するために、休日・夜間等の時間外医療と患者転帰の関係を多面的・多角的に分析することである。わが国では働き方改革が推進され、2024年には時間外労働の上限規制は医師にも適用される予定であるが、これはこれまでに休日・夜間等の時間外の救急医療提供体制の整備を推進してきたわが国の医療計画とは相反しうるもので、救命機能を維持した働き方改革を実現するには、時間外医療と転帰についての詳細な分析に基づいたスキームを構築する必要がある。 初年度には、最も緊急度や重症度が高く高度で専門的な医療を要す院外心停止患者を対象とし、1) 現状分析、2) 経年分析、3) 特殊な患者での分析を行った。 既存レジストリデータ(消防庁救急蘇生統計)を用いた現状分析では、時間外の救急医療提供体制の整備が行われてきた現在でも、時間内と時間外では院外心停止患者の治療成績に差があることが明らかとなった。 通常の心原性心停止とは異なる特別な治療体制を要す小児心停止や外傷性心停止における検討でも、夜間は生存の低下と関連することが明らかとなったが、一方で、休日に生存が低下することはなかった。 過去の小児院外心停止の研究では夜間も休日も生存の低下と関連していたが、今回の研究で休日と平日の治療成績の差は経年的に縮小傾向であることが明らかとなった。 時間外の救急医療提供体制を維持しつつ働き方改革を推進していくためには、今後他職種へのタスクシフトを進めていくことが不可欠と考えられることから、最終年度には本研究の発展的課題として救命医療におけるタスクシフトの効果に関する研究を行った。小児院外心停止を対象に医師と救急救命士による二次救命処置の治療効果を検討し、医師による処置の方が有意に治療成績がよいことが明らかとなった。治療成績を維持した他職種へのタスクシフは今後の検討課題である。
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