手術室で使用される電気エネルギーデバイスが原因の有害事象が一定の頻度で報告されている。米国では消化器内視鏡外科学会(SAGES)で対策プログラムが行われているが、本邦では教育システムなど確立されたものはない。またハンズオンセミナーは参加型体験学習により実践的で教育効果が高いと報告されている。当院では、FUSEプログラムを参考にし、ハンズオンセミナーを含めた医療安全教育や発生防止対策プログラムの開発を行っている。 目的 :ハンズオンセミナーを導入した対策プログラムの有効性を評価すること 方法:電気メスやエネルギーデバイスを実際に使用したハンズオンセミナーを2018年から2023年まで計10回開催した。参加者がセミナー前後に行ったアンケートと確認テストを比較した。手術室での有害事象発生頻度を把握し、プログラム開始前後でインシデント報告数の比較を行った。 結果:参加者は115名(医師81名(研修医49名、各科専門科32名)、医療スタッフ34名であった。手術室医療安全に関する教育受講経験者はいなかった。テストスコアはセミナー後で優位に上昇し(p<0.0001)、手術室経験年数や職種の違いでセミナー前後スコアに差は認めなかった。セミナーに対する評価も良好であった(満足度98%)。インシデント報告には熱傷、皮膚損傷(28件)、対極板トラブル(11件)などが含まれていた。インシデント報告数はプログラム導入前に総手術数の0.07%(49件)に対して、プログラム導入後は0.04%(12件)と減少した(p=0.04)。 考察 :手術室医療安全の知識は職種や手術室経験年数によって得られる知識ではなく教育が必要である。プログラム開始前後でインシデント報告数減少からハンズオンセミナーを導入した本プログラムは、手術室医療安全対策として実践的で有効である可能性が示唆された。
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