医薬品の適正使用に関する知識の定着を目指す「くすり教育」は,2012年より中学校で開始されている.近年,オーバードーズ等が社会的問題となっていることもあり,くすり教育への学校薬剤師の参画が注目されているが,学校薬剤師と学校関係者の連携は進んでいない. 本年度は,教育に関与した経験のある学校薬剤師にインタビューを行い,学校薬剤師と学校関係者が協働して行うくすり教育の推進に向けたプロセスを明らかにすることとした。半構造化面接法にてインタビューを実施し、逐語録を修正版 grounded theory approach(M-GTA)を用いて解析した。 検討の結果、協働したくすり教育の推進には、教育への参画意欲の醸成や自職場・薬剤師会等のサポートを含む協働するために必要な環境構築が基盤となっていた.しかし、養護教諭を中心とした学校関係者との連携不足、教育能力やマンパワーなど求められる薬剤師としての対応、教育者および保護者を含めた医薬品に対する理解差から生まれるくすり教育を受ける側の多様化をくすり教育を協働する上での障壁として感じていた。これら障壁に対し、専門でない分野の相補的支援を含めた学校関係者から必要なサポートを受けながら、ICTの活用や生徒の一番身近な教育者である学校関係者及び保護者への教育など多様化する教育手法への対応、薬剤師ができる支援、協働することを想定した教育といった協働したくすり教育に向けたアプローチを継続的に行っていくことで、くすり教育において求められる存在となり、次世代に繋ぐくすり教育を可能としていた。協働したくすり教育の実施には、教育に携わりやすい環境構築が基盤であり、これは薬剤師業界全体で取り組むべき課題と認識し、社会的にもくすり教育には薬剤師が求められる存在となる必要があることが示唆された。
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