研究実績の概要 |
蛋白尿は抗腫瘍薬ベバシズマブの主要な副作用であり、実世界での発生率とリスク要因は不明である。レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系抑制薬は臨床的に蛋白尿予防に使用されているが、その有効性は明らかでない。本研究の目的は、ベバシズマブ起因性蛋白尿の発生率とリスク要因を明らかにし、蛋白尿予防における降圧薬の有効性を検討することとした。国立病院機構データベースを用いた後ろ向きコホート研究として2016年1月1日-2019年6月30日までにベバシズマブを投与された入院患者を対象とした。本研究のアウトカムは、ベバシズマブ投与後12ヶ月以内の蛋白尿とした。患者の特徴、検査結果、および薬物治療を蛋白尿の有無で比較し、多変量ロジスティック回帰分析を行った。2,458人の患者のうち、27%がベバシズマブ投与後に蛋白尿を発症していた。看護依存(オッズ比 [OR] 2.40、95%信頼区間 [CI] 1.89-3.05、P<0.001)および収縮期血圧が140 mmHg以上(OR 1.44、95%CI 1.17-1.79、P<0.001)がリスク要因として特定された。推定糸球体濾過率(eGFR)が60-89、45-59、および<45 mL/分/1.73 m2の患者は、eGFRが90 mL/分/1.73 m2以上の患者に比べて、それぞれ29.7%、76.8%、および66.0%高い蛋白尿のオッズを有していた。降圧薬と蛋白尿発症に有意な関係はなかった。ベバシズマブ投与後に蛋白尿を発症する患者は、以前の報告よりも多い可能性があり、看護依存および収縮期血圧はベバシズマブ誘発性蛋白尿の予測リスク要因であった。これらリスクがある患者に対しては特に注意深くモニタリングする必要があることが示唆された。Kiyomi A, et al. PLoS One. 2023 Aug 10;18(8):e0289950.
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