本研究では撥水加工やテフロン加工に使わており、人体の免疫系への影響が考えられている有機フッ素化合物とT細胞のエピゲノム変化について調査している。 最初のターゲットとして、先行のコホート研究より有機フッ素化合物の曝露によりアレルギー有病率の低下や感染症にかかる頻度が上がることが複数報告されていることから、免疫抑制に関わる制御性T細胞に関するエピゲノム変化について調査を進めた。 制御性T細胞のマスター転写因子としてFoxp3が知られており、転写される際にDNAの脱メチル化が起きると考えられている。先行研究より、Foxp3のうち、特にメチル化変化が起きやすい部位として、プロモーター領域とConserved non-coding sequence 2 (CNS2)が報告されている。CNS2は制御性T細胞の安定性に関わる配列と考えられており、in vitroで誘導された制御性T細胞は、胸腺由来のものと比べてCNS2のメチル化率が高く、これが安定しないことに関係していると考えられている。 以上の報告より、有機フッ素化合物の曝露による制御性T細胞への影響として転写活性化と安定性への変化のいずれか、もしくは両方に影響すると仮説をたて、2つの領域のメチル化を評価する実験系の検討を進めた。しかしながら研究室の所属が変更になり、研究遂行に必要な設備を用意するためには予算が不足しているため、本研究は中断となった。
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