研究課題/領域番号 |
21K17265
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田鎖 順太 北海道大学, 工学研究院, 助教 (40791497)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 低周波音 / 振動感 / 音響心理実験 / 調整法 |
研究実績の概要 |
本研究では,低周波音の受容特性の解明および適切な評価手法の提案を目的としている。高架道路,発電用風車,工業用コンプレッサー,ヒートポンプ式給湯器,等の騒音源では低周波帯域の成分が卓越しており,睡眠妨害に加えて頭痛・めまい・吐き気等,他の騒音では見受けられない影響が報告されている。低周波音の受容特性を解明することで,これらの騒音についての適切な評価手法が示され,住民の健康保護につながると考えられる。 令和4年度までに,低周波音による「振動感」に注目した音響心理実験を行った。振動感は主として低周波音で報告される知覚であり,低周波音の受容を解明する上で重要と考えられるが,その周波数特性については未解明であり,そもそも「音の大きさ」という知覚との分離可能性について検討が行われてこなかった。予備的な検討によって,音の知覚の有無と振動感の有無の判別が困難であることが明らかであったため,実験では,2つの音の振動感の強さが等しく感じられる周波数・音圧レベルについて,調整法を用いて求めた。40Hzの音を基準音とし,もう1つの音は「周波数を固定し音圧レベルを被験者が調整する」音(レベル調整条件),もしくは「ラウドネスレベルを固定し周波数を被験者が調整する」音(周波数調整条件)を用いた。各周波数・ラウドネスについて,振動感(「頭の中や耳の奥で振動を感じる感覚」とした)の強さを合わせる調整を3回ずつ繰り返し,平均値を求めた。 調整の結果得られたレベル・周波数の値は,被験者によって大きく異なるだけではなく,レベル調整条件/周波数調整条件の差によっても大きく異なる場合があった。これは,「音の大きさ」等の知覚と「振動感」を判別することが被験者にとって困難であったことを示唆しており,心理実験によって振動感の反応特性を得ることが困難であることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
音響心理実験によって,低周波音の知覚反応のひとつである「振動感」を他の知覚と区別して評価することを試みたが,困難であることが示唆された。当初計画していた疫学調査よりも,低周波音の受容特性についてのさらなる検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
低周波音の受容特性に関する実験を行う。客観的な生理指標の利用や,音響マスカーによる知覚反応の統制を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
低周波音の受容を客観的に測定するための器具について未購入であるため,本年度予算について繰越が生じている。 次年度については,生体指標測定器具購入費(80万円),被験者謝金(10万円),研究成果発表費(30万円),屋外騒音測定器具購入費(20万円),その他消耗品費(10万円),等に使用予定である。
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