研究課題
本研究は工業用に使用され、その蓄積性から次世代への曝露影響が懸念される、有機フッ素化合物類(PFAS)によるヒト中枢神経系分化・発達への影響を解析する。これまで、実験動物を用いた研究から、周産期のPFAS曝露が中枢神経系の発育・発達を阻害する可能性が報告されているが、ヒトの周産期PFAS曝露による影響は明らかでない。また、中枢神経系の分化・発達と同時期に構築され始める血液脳関門(BBB)への影響を検討した報告は少なく明らかでない。以上から、 PFAS曝露による影響を「ヒト胎児由来神経前駆細胞株を用いた神経分化」、「BBB透過性及び機能」から評価することで、PFAS曝露による胎児脳神経系の 発達、発育への影響とその機序の解明を目指す。さらに、甲状腺ホルモンを介した毒性影響が疑われているため「甲状腺ホルモンを介した毒性影響」についても検討を行った。本年度においては、「BBB透過性及び機能」を検討するため、血液脳関門を模したヒトiPS細胞由来BBBモデルを用いた実験を行った。PFASであるパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)の曝露を行いBBBの発達と機能への影響の検討を行い、高濃度曝露群においてはBBBタイトジャンクションの機能に影響を及ぼす結果が得られた。しかし、ヒトが曝露されていると考えられる濃度においては、その影響を認めなかった。また、「甲状腺ホルモンを介した毒性影響」を検討するため、初代培養を行ったラット由来プルキンエ細胞にT4およびPFOS を共曝露した結果、有意にT4のみ曝露した群と比較して樹状突起の形成を阻害し、T3では樹状突起の形成阻害を認めなかった。この結果がT4をT3変換する酵素であるDIO2にPFOSが影響を与えることによると報告した。しかし、本研究によりPFASによる神経発達毒性メカニズムは明らかになっておらず、さらなる検証が必要である。
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