今年度では、代表者は2020年から2021年にかけて、西日本(金沢、福岡、能登、福江)における黄砂と多環芳香族炭化水素(PAHs)およびニトロPAHsの長距離輸送と健康影響を調査した。 黄砂は西日本の環境中粒子状物質(APM)濃度を上昇させたが、総PAHおよびニトロPAH濃度は上昇させなかった。 APMの平均濃度は金沢で最も高かった(23.8±34.1μg/m3)。全PAHの平均濃度は福岡が最も高かった(0.76±0.84 ng/m3)。能登はすべての化合物の濃度が最も低く、福江は都市部(福岡市)と同等かそれ以上の濃度であった。さらに、冬季には能登と福江で大気汚染物質の濃度が上昇した。アジア大陸からの長距離輸送は、夏季を除く2年間で検出された。特に福江と能登では冬季の長距離輸送が顕著であった。西日本における黄砂とPAHsとニトロPAHsの長距離輸送は、輸送ルートと起源が異なることがわかった。この情報は、なぜAPMが異なる健康影響反応を引き起こすのかについて、より深い洞察を与える。勤務先が変わったため、代表者は金沢大学から提供された動脈硬化性心血管系のデータに接 続できなかった。そこで、黄砂とPAHsの一般的な健康影響を調査した。西日本のBaP_eq濃度は、BaP_eqの年間規制値1.0ng/m3よりはるかに低く、欧州の遠隔地のBaP_eq濃度(0.02ng/m3)に匹敵した。その結果、PAHsは鼻症状、成人日本人の喘息、慢性咳嗽患者のリスク増加と正の関係を示したが、黄砂のPM2.5は喘息に影響を及ぼさなかった。都市部(金沢市と福岡市)では、PM2.5に起因する症例数が多く、PAHsに起因する生涯追加がん症例数も農村部より多かった。しかし、福江では、人口10万人当たりのPM2.5によるリスク帰属症例数が都市部より多く、これは農村部でのLRTによる健康リスクを表している。
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