研究課題/領域番号 |
21K17270
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
木下 貴明 長崎大学, 感染症共同研究拠点, 助教 (00803181)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | SARS-CoV-2 / 糖鎖 |
研究実績の概要 |
現在、新型コロナウイルスSARS-CoV-2は、世界中で大流行している。ワクチン接種率が高まり、治療薬も普及しつつあるが、度重なる変異株の出現による感染の再拡大が何度も起こっている。 SARS-CoV-2と遺伝的に近縁なコロナウイルスが、キクガシラコウモリやセンザンコウで見つかっており、これらの動物がSARS-CoV-2の自然宿主あるいは中間宿主であることが示唆されている。最近、ヒト細胞に感染性をもったコウモリコロナウイルスが見つかったという論文が発表されたが、SARS-CoV-2の病原性に重要だと考えられているスパイクタンパク質のフーリン切断部位をもつコロナウイルスは、コウモリから見つかっておらず、SARS-CoV-2の由来については依然として不明な点が多い。また、SARS-CoV-2がどのようにしてヒトに伝播したのかはまだ不明であるため、新たなヒトコロナウイルスの出現に備えることができない。 本研究では、自然宿主からヒトへの伝播に必要な分子を検討し、ヒトへの伝播メカニズムの一端を明らかにすることを目的とする。 当該年度は、まずSARS-CoV-2 が結合する糖鎖構造を明らかにするための実験系の確立を試みた。 過去の報告でMARS-CoVが結合することが明らかになっている糖鎖構造を含む、いくつかの糖鎖分子をプレートに固相し、それぞれのウエルにSARS-CoV-2(D614G株)を段階希釈したウイルス液を加えた。その後、SARS-CoV-2に対する抗体を用いたELISA法によって、各糖鎖に結合するウイルスの検出を試みた。今回の実験条件では、どの糖鎖を固相したウエルにおいてもウイルスを検出することができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、当該年度は糖鎖分子に対するヒトコロナウイルスの結合性を明らかにすることを目標としていた。当該年度では、SARS-CoV-2の糖鎖分子への結合性の解析は、行うことができた。しかしながら、新型コロナウイルスへの対応などにより、他のヒトコロナウイルスを用いた解析を行うことができなかったため、「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度に実施したELISA法によるSARS-CoV-2の糖鎖分子への結合性の解析に関して、次年度においては、まずは本実験系がきちんとワークしていることを確認するポジティブコントロールを検討する。また、次年度では、糖鎖分子を用いたSARS-CoV-2の細胞への感染阻害実験を行い、SARS-CoV-2が感染する際に必要とする糖鎖分子の検討を行う。さらに、他のヒトコロナウイルスに関しても、上記の同様な解析ができるように準備を進める。
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