これまで大腸がん予防研究において、抗炎症剤であるアスピリンなどを用い炎症などのプロモーター作用を制御する方法の研究が行われてきたが、免疫学的なアプローチによるがんの制御の研究はほとんど行われてこなかった。近年、免疫抑制細胞が、大腸がんの高危険疾患である家族性大腸腺腫症(FAP)のモデルマウス(Minマウス)の腸ポリープ産生に重要な役割を果たしている可能性が示された。そこで本研究では、アスピリンが免疫抑制細胞を制御することにより、腸ポリープ産生を制御するという仮説を立てた。まず、Minマウスにおける免疫抑制細胞及び腸ポリープ産生の関連を詳しく解析する。Minマウスの脾臓摘出することにより、ポリープ産生を抑制する実験結果が得られた。またメカニズム解析を継続して進めている。具体的にはMinマウス及びC57BL/6マウスの脾臓細胞及び腸管在住のリンパ球を、アスピリン投与前後で単離する。単離後に、フローサイトメトリーでリンパ球を測定する。同時に、腸ポリープや脾臓の病理切片を免疫染色し、遊走している免疫抑制細胞を同定することができた。今後はT細胞関連のサイトカインをCytometric Beads Array(CBA)にて網羅的に測定し、その抑制能を検証する。 FAP患者の脾臓サイズの解析実験は終了してる。次は家族FAP患者のパラフィンサンプルなどを用いてマウスで得られた知見が、ヒトにおいて確認できるか実証する。
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